「分裂以前にさえなかった光景だぁ」
ポツリとホシが零した独り言を、俺は聞き拾ってしまう。
中学時代にさえなかった光景か。ヨウも日賀野も仲間を想う気持ち、大切にする気持ちは一緒だった。
でも常に二人は考え方が180度違い、折り合いがつかなくて喧嘩ばかりだった。こうしてお互いを認め合ってタッグを組めば、良いコンビなのにな。ヨウと日賀野。
「しかし、荒川にまともな意見を飛ばされて、挙句作戦を提案される日が来るなんてな。アリエネェ。俺が地に落ちたか、それとも向こうが少しだけ、ほんっの少しだけ成長したのか……」
不意に日賀野が溜息をついて唸り声を上げる。
あー……フツーにそこは成長を喜ぶべきじゃね? 認めてやるべきじゃね? とか思うのは俺だけか。
ヨウも随分成長したと思う。
出逢った頃に比べれば格段に頭を使うようになったしな。
認めてやってくれよ、日賀野! 癪なのは心中お察しするけど!
「ヨウも頼もしくなったな! 敵ながらアッパレ、このままいくとヤマトさんと並ぶな!」
スゲェスゲェとイカバが素直に人を褒め、凄いと豪快に笑声を上げている。
調子のいいヨウはどうもどうもと手を挙げ、褒め言葉を素直に受け止めている、その傍らでは。
「誰が単細胞に負けるかっ……ああくそっ、胸糞悪い! 貴様と同じレベルのアタマになんざならねぇよ!」
日賀野は悔しそうに地団太を踏んでいた。
さっきと逆のパターンだな。ご機嫌のヨウは向こうチームに褒められて愉快そうに、
「チームメートをこっちに吸収してやってもいいけど?」
胸を張っていた。
あんまり調子に乗らせると、いつもの悪い癖を発揮するヨウが出てくるから、褒めるのはここまでにしておこう。
作戦も決まり、早速三つにグループを分ける。
まずは戦闘重視パーソンから。
斬り込み隊はヨウを筆頭に腕っ節のあるタコ沢、ホシ、紅白饅頭双子不良(名前なんだっけ。こいつ等)。それからシズに副頭さん。
どいつもこいつも喧嘩に強い面子だ。
多めに戦闘重視パーソンを入れることで真っ向勝負作戦、否、混乱作戦に持ち込むという寸法だ。
本隊は日賀野を筆頭にワタルさん、魚住、キヨタ、イカバにモト。
人数は若干少ないけれど、何人か腕っ節のある奴を残すことで、後から合流する祭に巻き返しを図るという寸法だ。
ワタルさんや魚住は特に重傷者だからな、本隊に入る必要性がある。
女でも腕っ節が強い響子さんは本隊兼救出隊についた。
本隊の内、モトとイカバが救出隊に加わるみたい。
三人でこっそりこそこそと人質救出することになった。
さてと問題は俺達、個人重視パーソンだ。
弥生は自己申告で救出隊につきたいっと言ったから決定。
利二、ハジメ、アズミは外部から協定チームや敵の動きを見るために連絡係り。
間接的に救出隊。平成のルパンのこと健太はピッキングの腕を持っているから当然救出隊。
じゃあ……俺は?
できることなら俺、斬り込み隊に入りたいな。
腕っ節に自信はないけど、指揮官的に安堵感を抱けるのは舎兄なわけだし? それにトラウマが、あったりするわけだから……なあ?
俺の気持ちを察してくれたヨウは、
「ケイは俺達と行こうぜ。いつもどおり俺がチャリの後ろに乗るから」
と告げてニカッと笑顔を向ける。
ホッとしたのも束の間、何を言っているんだとばかりに日賀野が意見する。



