これじゃあ、カタチだけだぞ! チームを結び合った意味がねぇ! 時間もねぇ!
ついでに空気の重さに胃が重てぇ!
……リーダー二人さんよ、仕切っておくれよぉ!
お前等は上辺でも手を結んだんじゃねえのかよ!
なんで一触即発ムードが漂っているわけ? そんなに仲が悪いのか?!
そりゃ犬猿の仲かもしんないけどなぁ、“犬猿”と書く犬と猿だって桃太郎や雉と一緒に鬼ヶ島に行って鬼を退治したじゃないか! 今だけでいいから仲良くしようぜ!
心中で涙を流し始めた時、「あひゃひゃひゃひゃ!」「おひょひょひょひょ!」二つのウザ口調笑い。
謂わずもワタルさんと魚住だ。
神社裏一杯に笑い声を満たして、これじゃあ時間の無駄だと指摘。
さっさと始めないとゲームに負けるどころか、大敗!
それはごめんだと二人して大笑い。ナニがそんなにおかしいのか、俺には謎も謎だ。
でも二人なりに重苦しい空気を打破してくれようとはしているみたい。
腹抱えて大笑いしている二人は声を揃えて話し合いをしようと提案。
「あひゃひゃひゃひゃ! このままの空気なら僕ちゃーん、ひとりで五十嵐に挑むっぽ! あひゃひゃ、僕ちゃーん死亡フラグ!」
「おひょひょひょ! まったくもってそのとおり! わしが一緒にお供してやっても良いぞい! おひょひょひょ!」
「あひゃひゃっ、アキラ! 一緒に死ぬ? 死ぬフラグ? きもーいお!」
「おひょひょひょっ! それも人生じゃい! 『我が生涯に一片の悔いなし』じゃ! 悔いあり過ぎるけどのう!」
あひゃひゃひゃひゃ!
おひょひょひょひょ!
神社裏に響き渡る二つの笑い声。そして俺の心境はう、うぜぇ……。
いつも耳にするウザ口調が二倍も三倍もウザく感じる。
さすがは元親友同士、ウザ口調の持ち主が二人揃うとマジうっぜぇのなんのって、あひゃおひょ! 俺も笑いたいくらいうっぜぇと叫びたい! 叫んで胸の内をスッキリさせたい!
ただ二人のウザ笑い声のおかげさまで沈黙は散り、ようやくリーダー二人が重い口を開いて話し合い開始。
この開始までに十分ほど時間を要したのは、もはやご愛嬌だろ! な?!
ジベタリングをしているヨウはうーんっと腕を組んで、ポツリ。
「五十嵐の場所をある程度、特定はした。で、これからどうするかだろ? ……こりゃもう乗り込むしかねぇだろ」
すると石段に腰掛けていた日賀野が出た出たとばかりに鼻を鳴らす。
「ッハ、単細胞はこれだ。過程を考えず、結論だけ出す。まずは順序を立てて物を言え」
バチン、二人の間に軽く火花が散る。ちょ初っ端からそれ? それなのか?!
あわあわと俺が「ヨウ。落ち着けって」、向こうチームの健太が「今は穏便に」と日賀野を宥めるけど、二人の火花は散るどころかエスカレート。
「ヘッ、頭でっかちサマは? ウダウダと過程を考えるのが相変わらずお好きなことですねぇ。結論は一緒のクセに」
「考え無しは馬鹿みたいに乗り込むしか考えねぇだろうが。ココを使え、ココを」
「ヘッ」ヨウは青筋を立てて中指を立てた。
「ッハ」日賀野も青筋を立て、カスと悪態。
更にヨウが舌を出し、日賀野が立てた親指を下に向けた。
刹那両者カッチーンのブッチーン、血管が切れかかる。リーダー二人はやんのかとばかりに勢いよく腰を上げた。
ちょ、あんた等っ、ほんともうっ、口を開くだけで喧嘩かいなぁ!
「だいったい貴様は、そうやって考え無しに物を言うからアタマにくるんだ。なんでアタマを使おうとしねぇんだっ、クソめんどくせぇ!」
「はあ?! お前ほどメンドクセェ狡い男はいねぇよ! テメェみてぇに遠回しな考え方よりかはマシだろーが!」
ああくそっ、フツーに始まっちゃったよリーダー同士の喧嘩。
今にも食って掛かりそうなリーダー二人を俺と健太で必死に宥め止める。



