それは中学時代以来、そして俺にとって初めて条件付き協定が成立した瞬間を目にする。


グループだった頃からいがみ合い、憎み合い、チーム結成後。本格的に潰し合いをしていた両チーム。


そのチームが亀裂を乗り越えて協定を結ぶ。


五十嵐を潰すまでという短いスパンではあるけれど、確かに対峙してしていたチームが一つになった。


誰が予想をしていただろう?


こんな未来。こんな展開。こんな光景。


リーダー二人はバッと相手の手を振り払って後ろに飛躍。


一旦距離を取ると、一呼吸置いて持っていたヒントの切れっ端を突き出した。


クシャッと曲がった切れっ端を突き出して、荒々しくもぞんざいに重ね合わせる。

そっと書かれていた文字を読み上げ、二人はチームメートに聞こえるよう声を出した。


五十嵐が俺等に出したヒントは『漁夫因縁』変な四字熟語だけど、中学時代に関わっているヨウや日賀野その他不良には一発で分かったらしい。


俺も薄々とは分かったよ。

漁夫は『漁夫の利』の略語、つまりヨウ達が使った『漁夫の利』作戦のこと。

そして因縁はその作戦が使われた場所のこと。


そう、五十嵐は決着の場所として。



「ケッ、因縁の場所でケリを着けようってか」


「ッハ、随分と最高のショーにしてぇようだな。自分の墓をまたあの場所……“港倉庫街”を選ぶとはな。五十嵐」



不敵に笑うヨウと日賀野、その笑みはまさしく勝機に満ちていた。




始まる。


中学時代に一つのグループとして動いていた荒川庸一と日賀野大和が手を結んだ反撃が。

これまでにない力で五十嵐竜也に喧嘩を売る、二つチーム合わさった反撃が始まる。


⇒#08