先回りをしたおかげで四つ角交差点に差し掛かった俺達の前に逃げて来る仲間達、そして向こうチームのバイクがやって来た。


「寄せてくれ」


ヨウのご命令を忠実に聞く俺は、ちょいと歩道から路面に出て境界線ぎりぎりを走る。

エンジン音で声は掻き消えるから、ヨウは指でニケツしてバイクの後ろに乗っているキヨタに指示。その指のサインはヨウが作り上げた合図。


脇道に入って撒け、集合場所はあらかじめ設定していた場所だと指示している。


幸いな事に、街はネオンで満ちていた。

指示する指はキヨタの目に飛び込んでくれる。


こっちに伝わるようコクコクと大きく頷くキヨタは運転しているシズの右肩を叩いた。


するとシズがバイクのホーンを鳴らし、他の奴等に合図。了解だとばかりにホーンがやまびこした。


「うっし」


ヨウは俺に歩道にチャリを戻すよう頼んで、集合場所に向かおうと肩を握り直してくる。


頷く俺は、一旦歩道に乗り上げると急ブレーキを掛けてハンドルを切った。


向かうは俺達のたむろ場。

あの倉庫は危険だけど臨時避難所くらいにはなるだろうということで、俺達はそこを避難所に指定している。


何かあればたむろ場に飛び込むシステムを作っているんだ。


たむろ場までの道は俺にとって庭みたいなもの。


俺は誰よりも早く到着するために、追っ手を振り切りながらペダルを漕いだ。ただただ夜風に乗って、必死にチャリを漕いだ。



さほど時間も掛からず俺とヨウは一番乗りでたむろ場に到着。


チャリを倉庫内まで持って行き、薄暗い倉庫の明かりを付けて他の皆が来るのを待つ。


程なくしてバイク組の皆も無事にたむろ場に到着した。


あー良かった良かった、になれば良かったんだけど……残念なことにオマケもついてきた。


そう一緒に逃げてい日賀野チーム。

どうやら追っ手は撒けても向こうチームは撒けなかったみたいだ。


次々にバイクが飛び込んでくる。


人様のたむろ場に対して無遠慮に入ってくる日賀野達は、バイクに降りるや否やヒントの紙切れを渡すよう睨んできた。


仲間を助けたい気持ちは同じだから、俺達もバイクを降りてガンを飛ばし拒絶。再び一触即発雰囲気が到来した。


だけど、ちょい両チームのリーダーの雰囲気が違う。

ガンを飛ばしているんだけど、何やら互いの本心を探りあうような眼を飛ばして口を閉ざしていた。不意に日賀野が口を開く。


「どーあっても……ヒントを渡す気にはならねぇんだな、荒川」

「ああ。俺達も必死なんだよ。テメェ等と一緒でな。今の俺達の目的はテメェ等じゃねぇ……五十嵐だ。できることならこの衝突は避けてぇ」


「まったくもって不本意だが同意見だ。このまま衝突すりゃどーなるか馬鹿でも分かる。このままじゃ帆奈美も……チッ、ねぇなマジで」


「ああくそっ」日賀野が盛大に舌を鳴らした。


ふてぶてしくヨウから目を逸らして仲間内に声を掛けると、たむろ場にいる仲間に連絡を取るよう命令。


今すぐ仲間を此処に集わせるよう告げていた。

向こうと同じ動作をヨウもしてくるもんだから、チームメートの俺等はちょっと困惑。


でもすぐにリーダー達の考えが読めたから、黙って指示に従った。従う他なかったんだ。


指示から数十分後、各々チームメートが此処倉庫という名のたむろ場にやって来る。

向こうのチームを見る余裕は無いのだけど、俺達のチームからは情報収集に行っていた弥生や響子さん。

たむろ場で待機していたハジメは利二に介抱されながら、倉庫内に足を踏み込んできた。


全員が揃うとヨウはチームメートを集合させて、


「テメェ等の意見を聞きたい」


率直に物申す。

破れたヒントの切れっ端を手の平に転がし、低いトーンで話を切り出した。