「いざ助けるって時、ケイさんが顔面蒼白にしていたらココロさんがびっくりするっスよ! ね、少し休みましょう?」



キヨタの優しい気遣いに甘んじ俺は努力して眠るようにした。

疲れているのに一生懸命笑顔で俺に助言してくれた弟分のおかげで、少しだけ眠れた。だから起床した後、キヨタには一番に礼を言った。


仮眠を取った後はまたヒント探しを開始。


情報収集係りの弥生、その彼女を守るタコ沢以外は全員で工事現場に向かい、ヒントとやらを必死こいて探した。


けど全然出てこない。


しかも妨害ばかり俺達の前に現れてくれる。


疲労は勿論、精神的にも徐々に追い詰められるような感覚に陥った。


夕方まで探していたんだけど手掛かりゼロ。


時刻的に二日目に突入し、俺達は休息を取るために再び浅倉さん達のたむろ場に戻った。


一日が経過しているのに収穫はゼロ。

ココロの安否も分からない。


チームの中で不穏な空気が流れ始めたけど、不安になっていても同じだ。


早めの夕飯を取りながら、俺達は頭をリフレッシュすることにした。


でも俺自身、あんま食欲が湧かない。

休憩室の四隅に座り込んでおにぎりを口にはするんだけど収穫がなかったことや、無常に時間が過ぎていく。その現実に苛むばかり。


こうしている間にもココロの身に酷い仕打ちが降りかかっていないか、思っては憂慮を抱いて落ち込んでいた。


気持ちは皆一緒なんだと分かっているんだけど、な。


溜息をついて食事を進めていると、


「ケーイーさん」


元気の良い声が頭上から降ってきた。

顔を上げればニィーッと満面の笑顔を作っているキヨタが一匹。手にはいっぱいの菓子パン。

「どれがいいっスか?」

ニコニコッと笑顔を向けて腰を下ろしてくる。



「ケイさん、疲れている時にこそ甘いものっスよ。メロンパンにチョコパン、あんぱん。あー……これは何パンだろ。カレーパン? 駄目だ論外。
甘いパン甘いパン。何これ、チーズパン? ……美味いけど甘くないから却下。あ、いちごのジャムパンあるっスよ! どうっスか? ジャムパン」



「キヨタ」



「いっぱい食って、いっぱい休憩して、ココロさんを助けましょ? 元気じゃないとココロさんも悲しみますって。
あ、俺っちも勿論、悲しみますから! なんたって一番の弟分なんですから!」



キヨタはドンッと胸を叩いて満面の笑顔を浮かべてくる。

なんだか元気を分けてくれるような気がして俺は思わず綻んだ。


こうしてキヨタには何だかんだと、支えられている気がする。


そういえば俺が落ち込んでいると、一生懸命に元気付けてくれようとするよなキヨタ。健太の時もそう。プチパンケーキをくれて励ましてくれたっけ。


俺なんかのために奔走しちゃって、勿体無いをことしている。


でも感謝したい。こんなキヨタに。


キヨタには振り回されていること多い。

発言も俺を見る目も美化しがちだけど……熱意が伝わってくる分、俺も何かコイツに返したいと思う。


こう思う時点で俺にも兄分心というものが芽生え始めているのかもしれないな。

馬鹿で真っ直ぐすぎる、可愛い俺の弟分だと思うよ。


「なあキヨタ」


さっきよりもスムーズに食事を進める俺に、


「チョコパンがいいっスか?」


ジャムパンと比べてくるキヨタに笑って礼を言った。


「ん?」なんで礼を言われるんだと首を傾げるキヨタに、重ねて礼を言う。ますます首を傾げるキヨタに、俺は目尻を下げた。