「そうか」


ヨウはタコ沢の意見を反芻、カレーパンを口に運んで思案する素振りを見せた。

程なくしてヨウは別行動を取っていたチームメートに現状報告。


収穫が無かったこと、妨害が凄まじいこと、それから日賀野達が同じゲームに参戦していることを教える。


「五十嵐は因縁ある中学時代の俺達を……徹底的に甚振りたいみてぇなんだ。だからココロと同じ状況に帆奈美も立たされているらしい。ヤマト達もヒント探しをしていた」

「まあ、五十嵐にとっては分裂しよーが何しようがカンケーねぇしな。うち等に恨みを抱いてるにはちげぇねぇし、そう思うと弥生達には悪いことしているな」


響子さんが高校から関わり始めた俺、弥生、キヨタにタコ沢に向かって苦笑。


まったくもって今更だし、五十嵐には俺だって個人的私怨があるぞ。


首を絞められたし、ボッコボコにされたし、大切なココロを攫ったという私怨があるのだから。


こうしている間にもココロが何かされているんじゃないかと憂慮を抱く。


ちゃんと食事しているかなココロ。


ちゃんと飯は貰っているかな。


酷いことはされていないかな。


心配を寄せれば寄せるほど、胃が捩れるような重くなるような感覚に襲われる。ネガティブ乙だぞ、俺。


「今のままじゃ困ったねーん。今からチーム募集しても間に合わないだろうし……考えられるとしたら」


ワタルさんの言葉は途中で切れてしまう。


皆、分かっているんだ。

募集する時間が無い以上、少しでも勝機の確率を上げる手法は一つしかない。


だけどそれは中学時代の因縁を持つ不良達にとって最も苦痛な選択肢。


亀裂が入っている以上、基本的には無理だよな。


ヨウ曰く分裂後、五十嵐が水面下で更なる亀裂を入れようと行動していたらしいけど、さっきチームと鉢合わせしただけでも険悪ムード。

仲直りには程遠い雰囲気だった。


日賀野達も同じ条件が突きつけられていると思うけど、どうするんだろう。やっぱ向こうは策士チームだから、なんか良い策があったりするのかなぁ。


結局どうすればいいか答えは出ず、俺達はとにかく目前のヒント探しに集中することにした。


地図を広げて俺は思い出せる限りの工事現場を皆に教えた。


特に規模のでかい工事現場には赤マジックで囲って、より場所を覚えてもらうよう努めた。


次に“小さな光”ってのを、知恵を出し合って考える。


けど俺達は探偵じゃないから謎掛けにチンプンカンプン。

頭を捻るしかない。浅倉さん達にも協力してもらって、謎掛けを手伝ってもらうんだけど……。


「こぎゃんまどろっこしいヒントん与え方ばせんでもよかとに(こんなまどろっこしいヒントの与え方しなくてもいいのに)」

「涼の言うとおりだ。アー……小さな光……小さな光……小さいってどれくらいの規模だろうな。豆電球くれぇか?」


「和彦さん。それじゃあ工事現場から見えませんって。そうですね……外灯が妥当と思いますけど」


「外灯なんていっぱいあるぞ、蓮。んー、手当たり次第探すしかないよなぁ。これ」


桔平さんの言うとおり、手当たり次第探すしかないという結論に達した。


だ、誰か探偵はいないのか、探偵は! くそう……フツーの暮らしを送ってきた高校生の頭脳じゃ無理があるって! IQが高い方でもないんだぞ俺達!


寧ろ追試組が多い馬鹿バッカっすよ! こんなこと言えば殺されるから、口が裂けてもヨウ達の前じゃ言えないけど。


こうしてヒント探しに夜が更けて、気付けば翌日の朝を迎えた。  


休息も必要だということで雑魚寝。


学校をサボって俺達は休憩室で仮眠を取った。


女子の響子さんや弥生は雑魚寝が嫌だっただろうに文句一つ零さずそこで仮眠を取っていたから、ソファーは彼女達に譲った。


俺達の女性に対する小さな心遣いだった。


二人は遠慮していたけど、野郎どもに勧められ、一日目は使わせてもらうということで二人仲良くソファーで仮眠を取っていた。


浅倉さん達は学校に行ったけど俺達は行く気も無く、すやすやと休憩室で眠りに就いていた。


本音を言えば、俺はココロの安否を気遣って最初こそ眠れなかったけど、俺の様子に気付いたキヨタが寝ておかないと体が持たないと助言してくれる。