【交差点四つ角・某ビル二階ビリヤード場】




「あ、お帰り。みんな! 無事だった?! ……大丈夫? すごく疲れているみたいだけど」



お出迎えの弥生に力なく笑みを返した俺達は部屋に着くや否やドッと座り込んでジベタリング。揃いも揃って大きく吐息をついた。


何一つ収穫がなく、寧ろ無駄足を踏んでしまったその重い足で向かった先は、浅倉さん達のたむろ場。


ゲーム中は俺等の拠点として使わせてもらうことになっているんだ。


俺達のたむろ場(スーパー付近の錆びた倉庫)じゃ寝泊りできないし、できたとしても襲われかねない。


浅倉さん達に無理を頼んでビリヤードの最奥にある休憩所一室を借りることにしたんだ。


ビリヤードの経営者は浅倉さんの先輩がしているそうだから、寝泊りの許可を浅倉さんに頼んでもらって(浅倉さんも人が好いから快く承諾してくれた)。


こうして人脈に恵まれた俺達は有り難く浅倉さん達のたむろ場の休憩室をねぐらにしたわけなんですが、行き当たりバッタリ隊の俺達は、ねぐらに到着するや否やドッと座り込んで休息タイム。


弥生に心配されるくらい俺達は疲労を溜めていた。


しょーがないだろ。

ほんと妨害のせいでやたらめったら酷い目に遭ったんだから。


行く先々で追い駆け回されるわ、喧嘩を売られるわ、俺に至っては物を投げられて運転を妨げられようとするわ。日賀野達には会っちまうわ、日賀野に会っちまうわ(大事な事は二回言うが基本だろ!)。


収穫もなく疲労だけが溜まり、日賀野にちょっかい出されて……マジで疲れた。


行き当たりバッタリ隊の疲労の色を心配して、響子さんがまず夕飯を取るよう提案してくる。

まだ飯を食ってなかった俺達は有り難くその案に乗って、夕食イタダキマス。

軽食のおにぎりやパンで栄養補給をすることにした。


その間も話し合いを欠かすことはしない。


ヨウは全員部屋にいるか無事か、怪我をしていないかどうかまず確かめた。


取り敢えず俺以外の怪我人はなし。

奇襲を掛けられたのは行き当たりバッタリ隊の俺達だけだったっぽい。

良かったのか、不運だったのか、考えるのは置いといて……皆無事でよかった。


「ケイ。大丈夫?」


弥生にこめかみの手当てを施してもらう。


大した怪我じゃないけど、これから先もああいう妨害は念頭に置いておかないと。


無事を確認し合うと報告会を開始。

まず浅倉さん達の下に行った響子さんとモトは、彼等が快く手を貸してくれること。


独自に五十嵐達の居場所探索を買ってくれたことを報告。


浅倉さん達には何から何までお世話になりっ放しだよな、ほんと。

幾ら協定を組んだとは言え、ここまで懇切丁寧にしてくれる不良チームもなかなかいないと思う。



次に情報収集に向かった弥生とタコ沢。



芳しくない情報を入手してくれた。


というのも、五十嵐が地元であまり素行の宜しくない不良達、まさしく不良と呼ぶべきワルな輩を仲間に引き込んでいるらしい。

大量募集した結果、人数が集ったとか何とか。


しかも皆それなりに実力があるらしい。


俺は地元の不良内情を知らないけど、内情に詳しいタコ沢曰く、五十嵐側についた不良達はみーんな難癖のある輩なんだって。



「五十嵐はお前等が中学時代に伸した面子プラス、新しい面子を加えてやがるぞゴラァ。
はっきり言うと、どんなに個々人に手腕があろうと今のこのチームじゃ勝てねぇ。人数的にも実力的にも不利だ。浅倉達を率いても難しいと思うぜ。
ケイや弥生は手腕がねぇときやがるしな。極め付けに人質を取られてやがる。圧倒的に不利だ」



チームのためだからこそ正直な意見を述べるタコ沢。


それに癇癪を起こす奴はいない。本当のことを言ってくれた方が今後の対策も打ちやすいしな。


彼の言う通り、シビアな現実だ。

限りなく勝つ可能性が少ないなんて。

まんま負けの喧嘩を買っちまったようなもんだぞ。

最悪一人の犠牲でゲームリタイアは可能なら……おっと、バカバカ、ナニを考えているんだ。チームに失礼だっつーの、俺。