ワタルさんと、向こうチームの魚住の大きな声が重なり、公園は沈黙に包まれた。


お互いにぎこちなくチームを見やって、

「は?」「あ?」

両者リーダー、間の抜けた声を出す。


あっらぁヤーな予感がするんだけど。しちゃうんだけど……ま・さ・か!


先に啖呵切ったのはヨウ。


「はぁあ?! テメェ等もまさかのゲーム中か?! マジかよあっりえねぇっ!」


「そういう荒川、貴様等もか。チッ、五十嵐め、どういうつもりだ……だが、見る限りテメェ等も俺等と同じヒント探しってことは、だ。
ある意味チャンスだよな? ちょいとお仲間を貸してもらうおうか」


シニカルな笑みを浮かべてくる日賀野はニッコリと俺を見て手招き。

おいでおいでとされる。


「へ? 俺指名っすか」


俺は自分を指差して確認。

頷く日賀野は「プレインボーイちょい面貸せ」こっちに来るよう何度も手招き。

それが地獄の手招きに見えたのは、果たして俺だけだろうか。

魔王様がなにやら手招きっ、アアッ、日賀野大和症候群っ! 俺、冷汗ダッラダラ! 硬直っ! 動悸っ、動悸がぁあ!


「プレインボーイ。ちょーっと来い。俺とテメェの仲じゃねえか」

「あっ、は……はははっ……っ」


どぉおおいう仲だよチクショウっ!

お前なぁっ、俺をフルボッコにしたじゃないかよぉお!

嫌だこの人っ、俺の最大のトラウマなう! 泣きたいっ、泣きたいんだぞっ!


ガタガタのブルブルブルブル。

体を震わせている俺に味をしめたのか、S心に火が点いたのか、


「早くしねぇとフルボッコ」


最強魔法の呪文を掛けてきた。


途端に俺、ヒッと引き攣ったような悲鳴を上げた。


ぎゃぁああっ、思い出しちまったっ!

フルボッコのアノ光景っ……嗚呼っ、メッタンメッタンギッタンギッタンにやられた俺。楽しく愉快にボコしてくれた日賀野の顔に、フルボッコの痛みに恐怖! 嗚呼、大パニック! 早くしねぇとフルボッコぉおおお?!


「キヨタァアアア! おぉお俺うえわぁあ!」

「お、落ち着いて下さいケイさん! 俺っちが守るッス!」


チャリから飛び降りた俺は、つられてチャリから降りるヨウをそっちのけでバイクの後ろに乗っている弟分の背後に隠れた。

合気道経験者である頼もしい弟分は構えを取り、


「誰が面なんて貸すかよボケェ!」


果敢にも魔王様に悪口をついた。

か、カッコイイ! お前めっちゃカッコイイ! 惚れるんだけど!


あと、す、すんません、情けない田山で

でも本当に日賀野は駄目なんです。できることなら二度とお会いしたくない人なんです。


便乗したのはヨウだ。

キヨタの言う通りだと吐き捨て、仲間は貸さないと敵意を見せる。


「ヤマト、仲間内に何してくれようとしてんだ。ハッ倒すぞ。俺達はテメェ等と関わる暇なんざねぇんだよ」

「それはこっちの台詞だ。時間内に帆奈美を助け出さなきゃなんねぇ。何が何でも情報を貰うぞ」


一変して険しい顔を作る日賀野。

どうやら向こうは帆奈美さんを人質にされているらしい。

両者女性を人質に取られているなんて、五十嵐も大概でヤな奴だよな。


しかも帆奈美さんといえばヨウの元セフレであり、日賀野の現セフレでもある。

ヨウは帆奈美さんをまだ想っているから、日賀野の台詞に舌を鳴らしていた。


ウザッタそうに舌を鳴らすヨウの態度は、帆奈美さんに対する嫌悪感なのか、それとも憂慮なのか。