「知ってるか。昨晩、駅前で荒川と貫名が隣町の不良を伸したらしいぜ」


「知ってる知ってる。二人に喧嘩を売ったからだろ? 馬鹿だよな。あの二人に喧嘩売るって、命を差し上げるようなものだぜ」


「ちげぇねぇ。あ、そういや荒川のヤツ。舎弟を作ったらしいぜ」


「あの荒川が? そりゃまた強ぇんだろうな」


「それがそうでも無いらしいぜ。見た目メッチャ弱そうで不良っぽくもねぇんだとか」



「そういうヤツほど、実は並外れた腕っ節があるって王道パターンだろ。空手習っていました~とか。合気道やっていました~とか。顔はイケてる。超美形。間違いなし」



「ありそうありそう」


笑いながらレジに二冊雑誌を置いてきた。



手際よく会計を済ませレジ袋に入れながら「620円です」と、客に告げる。


客はヨレた千円札を渡してきた。


受け取り釣銭380円を客に渡して、レジ袋を差し出し「ありがとうございました」と頭を下げる。



会話に夢中なのか、客は此方を見向きもしなかった。

去って行く背に溜息をつき、利二は雑誌コーナーに目を向けた。

週刊コミックを立ち読みしている同級生がひとり、ぎこちなく顔を上げて硝子越しに見える先程の客達に空笑いしていた。


あれこそ、客達が話していた荒川庸一の舎弟だった。