閑話休題、俺は古渡が持ち出してきたゲームについて説明をすることにする。
要求を一蹴する俺をある程度、古渡は見越していたのか「それじゃあ助け出してみせてよ」と挑発。
タイムリミットゲームをしようと彼女は持ち出してきたのだ。
多分、このゲームは上の五十嵐が考案したものだと思う。
三日の間に、もっと言えば72時間以内に自分達の居場所を突き止めて仲間を奪い返す。
そんな簡単なゲームをしようと提案。勝敗は仲間を奪い返せるかどうかに掛かっているそうな。
そりゃつまり相手がココロを軟禁するってことで……その間、ココロが何かしら虐げられるんじゃないかと懸念する状況だ。
それに俺を含む男達は、まだ傷が完治していない。不利も不利だ。
けれど敵は分かっていながらゲームを突きつけてきた。
乗らなかったらこの話は仕舞いにして即ココロを甚振ると言うし、それが嫌なら彼氏になれと無茶苦茶なことを言うし、だから独断で申し訳ないけど、どうしても乗らざるを得なかった。
「ゲームは今から開始、じゃなくココロの携帯から合図の電話があるらしい。しかも合図以降は何かしら妨害する輩が出てくるそうな。向こうは、とことんゲームという名の甚振りを楽しみたいみたいだ」
静聴していたヨウは舌を鳴らし、立てていた右膝から左膝へと体勢をチェンジする。
「チッ、五十嵐らしい甚振り方だぜ。仲間意識の高い俺等をとことん叩きのめすつもりか」
ガシガシ頭部を掻き、小さな息を吐くと「復讐してぇんだろうな」中学時代の因縁を引っ張り出した。
自分達の狡い策略に落ちた五十嵐は、自分のプライドを酷く傷付けられたと強い私怨を抱き、こうやってあの頃の鬱憤を晴らそうとしている。
ということはこのゲーム、日賀野チームにも……?
「んー。厄介なのはさぁ。あの当時の面子は今、分裂している点だよねぇ。
中学の時に五十嵐ちんを伸せたのは、作戦もあるけど、面子も一理あると思うヨンサマ。今のチームが悪いってわけじゃないけどねぇ。中学時代の面子だけ考えると力が半減しているっぴ」
ワタルさんの言葉に、ヨウは不快感を示しながらも同調。向こうの力は買っているみたいだ。
「奴等も強いからな」
溜息混じりに意見。
だからといって向こうと協力する気もない。
フンッと鼻を鳴らすヨウは、向こうと手を組んでも協調性がないから負けるに決まっていると吐露した。
確かにな。
因縁がある面子はすこぶる仲が悪い。
顔を合わせてもハブとマングース関係だからな。
喧嘩勃発が目に見えてらぁ。
根本的にお互いを認めてないもんなぁ、ヨウ達と日賀野達。というかヨウと日賀野。
中学時代の面子、今の各々面子、ヨウ達にとってどっちが実力あるチームなんだろう?
高校からヨウ達とつるみ始めた俺やココロ、弥生にキヨタ、不本意ながらもタコ沢。
目を配れば個性的な面子であるけれど、直接激突した時、手腕で使えるのはキヨタとタコ沢。
俺と女性組は足手纏いだ。
向こうのチームも新たにメンバーを揃えているようだけど、手腕的には中学時代の方があったんじゃないか? 実力派が揃っているしな。
とはいえ、ハブとマングースじゃあ……喧嘩勃発だろう。
今はとにかくこの面子で乗り越えていくしかないんだ。
なるべく足手纏いにならないよう、俺も気を付けないと。
古渡の話では、ココロの携帯から合図のお電話があるらしいから今はジッと待つしかない。
ヨウもそれを判断していたのか、
「今の内に家に連絡してくれ」
適当に口実を作って行動に支障が出ないよう強要。
「最悪72時間、この面子で過ごすことになると思う。どうしてもって時は一時離脱も許可するが、基本はチーム行動だ。いいか? 泊まりその他諸々親に口実を作れねぇ奴はいるか?」
ゲームのせいでココロが軟禁状態になるというのに能天気に家に帰れるわけがない。
他の皆はともかく、俺は親に適当な口実を作って最後までチームと行動を共にするつもりだった。
彼女が家に帰る日が、俺の帰る日だと思っているから。外泊を口実にすりゃどうにかなるだろ、三日くらい。
と、ここで響子さん。
「ココロの家にはうちが連絡しとく。適当に家に泊まっていると口実を作っておくから。
あいつのじっちゃんばっちゃんは孫に両親がいない分、寂しい思いをさせないよう猫可愛がりしいてるからな。こんな事件に巻き込まれているなんざ、口が裂けても言えねぇし」
「そうか、頼む。響子」



