一先ず俺達は手分けして彼女の足取りを探した。


響子さんが捜した付近も、遠出になるであろう隣町もたむろ場近くも、手当たり次第彼女の足取りを掴もうと躍起になった。


草の根を掻き分けても、ココロの情報が欲しかったから。


だけど見つからない。

五里霧中でチャリを漕いでも、バイクに乗っても、浅倉さん達に協力を要請しても。


まるで神隠しに遭ったかのようにココロの消息は掴めなかった。


埒が明かない上にハジメと似たような事件だと臭わせる一連の出来事。


闇雲に捜しても一緒だとヨウは判断して仲間に一旦招集を出した。引き返し、たむろ場に集結。


まずは落ち着いて効率の良い捜し方を探すことにした。


でも、残念な事に土地勘に優れている俺が乱心気味。

努めて平常心を保っているけど、内心混乱していた。


質問されても、生返事ばっか。

何を聞かれても分からないと答える始末。


「ごめん。ちょっと外す」


話し合いにどうしても集中できない俺は、少し外に出て頭を冷やしてくると仲間に頭を下げて倉庫を出た。


誰も何も言わないでいてくれた。それが俺にとって有り難い気遣いだった。


こんなことをしている場合じゃない。分かっている。


でも落ち着かないと、落ち着かないと、落ち着かないと、俺自身がチームに迷惑を掛ける。


外に出た俺は金網フェンスの前に立ち、


「チクショウ!」


苛立つ気持ちを目前の衝立にぶつけた。



ガシャン、フェンスを叩いて網目を鷲掴み。


その場に両膝をつける。

前触れもない事件。

ココロの行方不明。

舎弟という肩書き。

ハジメに似た事件の臭い。


古渡と繋がりがあったココロ。



すべてが俺を混乱させる。



何処行っちまったんだココロ。

昨日まであんなに俺の傍で笑ってくれていたじゃないか。


彼女のことでこんなにも取り乱す。

それだけ俺にとってかけがえのない存在だったんだ。


守ると決めていたのに、強くなると決めていたのに、事件が起きた途端これだ。狼狽するしかない。この駄目男め!



だけど、卑屈になっているばかりじゃ本当に駄目男だぞ。



大きく深呼吸を一つ零して、「大丈夫」俺は自分に言い聞かせた。


少し気が晴れた。

自分に喝を入れることで、少しは気が晴れた。

それが一時の紛いものだとしても気丈に振舞える糧にくらいにはなる。


そうだろう? ココロ。

こんなところで嘆くだけなんて、男じゃないもんな。


ゆっくりと立ち上がって、俺は膝についた砂を払い落とす。


戻ろう。

二呼吸置いて俺は踵返した。


同時にポケットに捻り込んでいたココロの携帯の着信が鳴って俺は度肝を抜く。


な、なんだ?

どうして突然電話が……もしかしておトキおばあさん達か?


人様の携帯だと分かってはいるけれど、俺は携帯を開いてディスプレイを見る。


登録されていない電話番号なのか、そこに表示されているのは数字の羅列。


うーん、間違い電話かもしれないけど本能が取れと命令している。

取らないと後悔する、そんな命令信号を脳が本体に下している。


俺は躊躇しながらも電話に出た。


こっちが何か言う前に、『荒川チームですかぁ?』甘ったるい女の声。


この声は聞いたことあるぞ。

電話越しだから俺の勘違いかもしれないけど、

「古渡?」

俺が名前を紡げば、ポンピンと正解音。


『根暗ココロの彼氏でしょー』


向こうは俺のことをご存知のようだ。

丁度良かったとばかりに笑声を漏らしてくる。何が丁度良い。なんだよっ……こいつ、まさか!