「今度はヨウさん達みんなで写真を撮ろうと思うんです。昔は昔です。これからを大事にしていきたいですから。今度ケイさんも一緒に撮りましょうね」

今度じゃなくたっていいじゃんか。今からだって出来るよ、ココロ。


「じゃあさ、今撮ってみる?」

「え? 今ですか? 家にカメラなんてあったかなぁ。私、デジカメは持っていないんです。使い切りカメラがあったかどうか」


「カメラはこれ」


俺はブレザーのポケットから携帯を取り出して、思い出作りの道具を取り出す。

なるほど。

納得して手を叩くココロに笑って俺達は写真撮影開始。


ちょい難しいけど、二人で寄るように詰めて座ると携帯を翳した。


「いくよ?」「はい」


せーのでイチ足すイチはニィっとピース。音と同時に携帯ランプが赤く光る。

翳していた携帯を手元に戻し二人で出来栄えを確認。


あ、なかなかよく撮れていると思う。


大事に保存しておこう。俺の大事な思い出だ。


この画像を赤外線でココロの携帯に送り、

「ヨウ達に内緒な」

秘密だと口元で人差し指を立てた。


「響子さんや弥生にはいいけどさ。男どもにこれがばれたら、ネタにされちまうから! ……まーじヨウ達は人の恋愛を弄くるの好きなんだよな」

「はい。二人だけの秘密ですね。大事にします」


ココロは嬉しそうに綻んで携帯を胸に押し当てる。

そんな彼女と寄り添うように肩を並べて、壁に背を預けて、他愛もない会話を開始。


でも暫くすると各々口を閉ざす。

二人っきりという空間に俺達はまだ慣れていない。


俺達はチームで動いているから、必ず誰かが傍にいる。

こうやって二人だけで時間を過ごすって滅多にないし、他校同士だから会える時間も少ない。


どこかで満足していない自分がいるのは、俺が貪欲だから……かな?


「体調平気?」


無難な俺の問い掛けに、「……はい」間を置いて返すココロ。

また沈黙が流れた。

ココロの部屋にある掛け時計からチックタックチックタック、一刻一刻を刻む音が耳に纏わり付いてくる。馬鹿みたいに纏わり付いてくる。


向こうに見える襖を見つめていた俺だけど、不意に「二人だけですね」ココロが緊張した声音で話を切り出してくる。


ほんとにな、二人だけだな。

チームメートはいない、奇襲を掛けてくるかもしれない不良の目もない。

ココロの祖父母も居間にいる。

今此処には俺とココロの二人だけだ。ふたりっきり、か。


「ケイさん……ずっと言いたいことがありました。一つお願いがあります」


ふとココロが俺を見上げ、硝子玉のような瞳に閉じ込めてくる。

一変して半泣きの顔をするココロは俺のブレザーの裾を掴んで握り締めてきた。


「これから先、怪我するな……は無理だと思います。
不良のチームメートになっているんです。怪我はして欲しくないです、でも、してしまっても仕方がない状況下にいますから、絶対するなとは言いません。

だけど! 今度、逃がしてくれる時は一言……私に言って下さい。あの時、ケイさんが何も言わず廃工場に残って……凄く心配しました。一言、残るって教えて下さい」


「ココロ……」

「じゃないと怒ります。怒りますから。今も本当は……ちょっと怒りたいです。あの時のこと」