「ハジメがあの程度の怪我で済んだのは、あの時俺を追い駆けてきたケイ、テメェのおかげだ」



突然の言葉に、俺は目を皿にしてヨウを見る。ヨウは目を細めて試合を眺めていた。遠回し礼を言っていることが分かった。

仲間思い、ワタルさんはヨウのことをそう言っていた。

本当にそう思うよ。じゃないとこんな風に遠回し遠回し礼なんか言ってこないだろ。義理や人情を大切にする不良だとは思っていたけど、ホント大切にする奴だよな。俺も試合に目を向け、そっと口を開いた。


「舎弟は舎兄の後を追うもんだろ。違うか?」


こっちを見てくるヨウと視線をかち合わせ、俺は笑ってやった。

不意を突かれたように目を丸くしていたヨウは、俺につられて笑うと背中を叩いてきた。

「もう一戦しようぜ」

「ちょ、それは俺」


「おい、ワタル! モト! そろそろ交替しろ!」


まーじーかーよー。 

俺、まだ休憩しておきたい。出来ることならこのまま座っておきたい。

だけどヨウに意見するなんて大それたこと出来ないから、俺は渋々椅子から下りることになるんだよな。



そうやってヨウの後を追うから、俺、どんどん厄介事に巻き込まれていくんだろうな。



自分の起こす行動に一理原因があると分かっていても、追わないわけにはいかないじゃないか。

あの時のヨウの必死な顔を見たら、仲間がどうのこうの不良を見たら、尚更だ。不良は恐いけど、舎弟の話を白紙にしたいけど、後悔するような選択肢はしたくない。


だから、取り敢えず俺は舎弟として舎兄の後を追うことにするんだ。


「ケイ、早くしろよ」

「おー。今、行く」


椅子から下りて俺は台に向かう舎兄の後を追った。




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