「具合が悪いってこころ、まーた生理痛? ちゃーんとお薬は飲まんと」
「ば、ばあば! そういうことっ、ケイさんの前で言わないでよ!」
反応しちゃ駄目だ、駄目だぞ。
ココロの名誉のためにスルーしてやるんだ。うん。反応ナッシングだぞ。
赤面して怒りを見せるココロに対し、おばあさんはのほほんと笑って「どーぞ上がって下さいな、今お茶の用意をするから」おいでおいでと家に招かれた。
え゛?
あ、ちょ、いやいやいや、俺は送ったらたむろ場に戻るつもりなんですが!
ココロだって具合いが悪いだろうし。
薬は効いているみたいだけど、ちょっと横になりたいだろうからな?
遠慮しようとする俺に、
「おはぎは好きかい? そんなものしかないけれど」
何とか積極的に家に招こうとする。
こ、これは帰るに帰れない状況である。断るのにも罪悪感……いやでもっ、ココロの具合が!
「ご厚意は嬉しいんですが、ココロの具合も悪そうですし」
「もうお薬効いているわよね、こころ。生理痛は病気じゃな「ばあば!」そんなに怒らんでもいいじゃないの、隠す必要もないだろうに」
能天気に笑うおばあさんは是非家に上がってくれと笑顔。
「おじーさん。こころが彼氏さんを連れて来ましたよ」
玄関を開けるなり大声でおじいさんに報告している。
おかげで俺はますます断れず、ココロも体調は幾分マシになったからと家に上がってくれるよう頼んできた。
「ばあば、乗り気ですから……」
ああなったら止められないのだとココロは苦笑を零していた。
わ、わ、わ、わぁお奇想天外な展開になってきたんだけど!
か、か、彼女の家にお邪魔するとかお邪魔するとかお邪魔するとかっ、うぇええ?!
まだ心構えも何もっ、不良が奇襲を掛けてくるよりも心臓に悪いんだけどっ! ぬぁああ手土産も何も用意してねぇよ!
こんなことならっ、ちょいと前のケーキ屋でケーキでも買ってくれば良かったあぁあ!
でも折角のご厚意を蹴り飛ばすわけにも行かず、俺はココロと一緒に玄関へ。
かくして俺、田山圭太は手ぶらの状態で彼女宅にお邪魔させてもらうことになった。トホホな気分だぜ、ドチクショウ。
取り敢えず……ヨウ達に連絡だけはしとこう。
後で笑いのネタにされそうだな。あーもう。



