ココロが好きなものは以下の通り。
手芸や絵を描くことが好きで、好きな色はオレンジと白、好きな食べ物はクッキー、行き着けのお店は本屋さん。
手芸の本や雑誌を眺めるのが好きなんだって。家庭的な子だから、料理雑誌を買ったりもするとか。
なるほどなるほど。
じゃあ、初デートは本屋?
いやいやいや、なんてジミーなデートスポットでっしゃろう!
でもお互いに系統が似ているせいか、俺も似たり寄ったりな回答をしてしまう。
漫画が好きだから本屋によく行く。
後はゲーム好きだからゲーム屋に行く。
ココロはゲームをしない女の子だから、二人の気が合う場所と言ったらやっぱ本屋なわけだ。
「本屋さんって時間が潰せますよね。眺めているだけでも楽しいです」
「わっかる。あそこで時間を潰そうと思えば、幾らでも潰せると思うし」
「うーん、でもデート場所ですかね? 異性の方と遊ぶって、今までなかったものですから……私、いまいち場所が出てこないんですよ。
不良の皆さんの恋愛話を聞いて参考にしてもいいんですけど、多分、私達にとってびっくり仰天な回答が返ってくると思いますし」
「だよなぁ。皆、超大人だから」
ヨウとか帆奈美さんと付き合い三日でベッドインだろ? ……どんなお付き合いの仕方だよ、理解に苦しむ! 中坊のくせになあにしてたんだよ!
「無難に映画かな?」
「ですかね?」
首を傾げ合う俺達。
異性同士で遊ぶって難しいな。
しかも二人きりになるわけだから、お互いが楽しめる、想い出に残るような場所が良いわけで。贅沢か? そういう風に考えるの。
ま、全部が終わったら悩んでみようかな。
贅沢な悩みとして取っておくのも……悪くはないだろ? いつ終わってくれるかは謎だけど。
「早く全部が終わればいいな」
「そうですね。不安も沢山ありますけど終わればいいですね。
だけど私、何があっても心を強くして頑張ろうと思います。皆さんや、ケイさんが一緒ですから……きっと大丈夫です。卑屈にならず、前向きに考えます」
はにかんでくる彼女に笑みを返して、俺は住宅街を歩んでいく。
そういう前向き発言してくれる彼女のことが、大好きだ。
どんな彼女でも好きだと言える自信はあるけどさ。
ココロの家は俺の家と同じ一軒家で平屋らしい。
新築が並ぶ一軒家たちの中、ちょいと古そうな一軒家を指差してあそこが自分の家だと教えてくれる。
家の裏には小さな畑もあって、祖父母が趣味で野菜を作っているとかなんとか。
彼女はご両親を亡くしているから、祖父母の下で暮らしているそうだ。
ココロの家族事情はヨウ達同様結構デリケートみたい。
度々家庭の事情は耳にはしていたけど詳細は聞いたことがない。
俺はなるべくご両親の話題に触れず、彼女の家の前まで足を運ぶ。
家まで送ったらそのままたむろ場に戻ろうと思ったんだけどその前に、
「おや、こころじゃないの?」
家の敷地で掃除している彼女の祖母らしき人に声を掛けられた。
「ばあば」
ココロがそう呼んでいたから、この人はココロのおばあちゃんなんだと確信を得る。
ばあばって呼んでいるんだな、可愛らしいじゃん、と思うのは、普通だよな! そう思ってもおかしくないよな!
「こころ、お帰り。その人は? それにどうしたんだい? あんれあんれ、ご大層におぶってもらって」
おっとり口調のおばあさんは見るからに優しそう。
ココロのおばあちゃんだというのも納得だ。
家の外に出てくるおばあさんに俺は「こんにちは」元気よく挨拶。
うん、第一印象は大切だからな! 悪く思われるのはヤじゃん?
おばあさんは笑顔で「こんにちは」会釈して、改めてどうしたのかと孫に質問を投げる。
俺の背から下りるココロはモジモジと手遊びをしつつ、説明。
「ちょっと具合が悪くて……送ってもらったの。あのね、ばあば、この人がばあば達によく話している圭太さん」
「まあ、じゃあ、こころの彼氏さん。それはどうも、こころがいつもお世話になっております」
深々と頭を下げられて、「こちらこそ」俺も深々と頭を下げた。
おぉおっ、無駄に緊張するぞ!
ココロ、おばあさんにいつもどんな話をしてくれているんだい?! スッゲェ気になる!
いや、話されたら赤面するから知りたくない気持ちも一抹あるんだけど。



