「テメェ等は会話を目ですることが多いんだよ。それが甘いっつーか。口を開いたら、また甘いっつーか。見舞いの時間が来る度に、何度にクソッタレと思ったか。
せめて目で会話するのはやめろ。青い恋を目の当たりにしている気分になっ……おい聞いてるかケイ?」


「……おー」


「……気色悪いほどオーラが春だぞ、お前」

「……おー」


「…………」

「……おー」


完全にすべての体温が顔に集まっている。  


こうやって他人に指摘されて初めてわかる。

俺とココロはちゃんと恋人に見えるんだな。嬉しいやら照れていいやらどうすればいいやら。


今の状況で恋人に見えるのは不味いかもしれないけど、だけどやっぱり嬉しい。ココロと恋人に見える現実が。



でもやっぱ恥ずかしさも出てくるわけで……。



俺は餃子をモシャモシャ食いつつ、チラッとヨウに視線を投げてすぐに視線を逸らす。それを繰り返しながら微妙な桃色オーラを出す。


「俺に目で会話をしても意味ねぇよ。キショイだけだぞ」


舎兄から盛大に呆れられた。

だ、だって仕方がないじゃないか。羞恥と喜びで言葉が出ないんだもん。目で訴えるしかねぇじゃん?


ちょっと前、思いが通じ合う前はそういう関係に見られて焦ったけど、今は恋人に見られえて嬉しいや。

うん、嬉しい……でも舎弟の彼女ってやっぱ危ないわけで。


ハジメの一件は五十嵐と関係している。

ということは古渡も噛んでいるんだよな……古渡か。ココロを弄くって遊んでた性悪女らしいけど(話を聞く限り男を寝取るらしい)、日賀野達と衝突する以上に不安だ。


何だか彼女を危ない目に遭わせそうな気がする。

傷付くような、そんな気がする。


ネガティブに考えちゃ駄目だけどさ。考えちゃ駄目なんだけど、やっぱなぁ。


「ヨウ、あのさ」


一変して浮かない顔を作る俺を流し目するヨウは、

「大丈夫だろ」

話もろくすっぽ聞かず返答。


さすがは兄貴。
俺の顔色だけで何を思ったのか、ある程度は分かったみたいだ。


「馬鹿な舎兄を蹴り飛ばすだけの力量があんだ。自信を持て。どーしてもピンチなったら、俺やチーム全員が手ぇ貸す、だろ? 俺と違って馬鹿するような奴じゃねーよ、テメェは」


チームの意味を再確認した男の発言はとてもとても頼もしいもの。

俺も「そうだな」力強く頷いて、餃子を口に放り込んだ。うん、大丈夫、何かあってもきっと乗り越えられる。


今までがそうだったように、きっと乗り越えられる。みんなで。


不思議だな、ヨウにそう言われると本当にそうだなっと思える。


それって俺達が互いに信用を置いている舎兄弟だからかな?

俺はあいつの重たい背中を預かっちまって、いつの間にかヨウも俺の背中を預かって支えてくれる兄貴。お互いに馬鹿なことをしたら、背中蹴り飛ばして気付かせる。


そういう関係に俺達はなっているんだろうな………へーんな異色舎兄弟。


「なあ、ヨウ。ひとつ暴露していい?」


お楽しみに取っておいたであろうチャーシューを銜えているお行儀の悪い不良に、俺はちょいと意地悪く笑って肩を竦めた。


「俺、実は舎弟に指名されてからずーっと、どうすりゃ舎弟白紙にできるか考えた。言っちゃえば、舎弟ドチクショウ! なんて思っていました」

「ぷははっ、そりゃ残念だったな。白紙にできなくて。これから先もそれはねえから安心しろよ」


当時の本音も笑い話に俺達はラーメンのスープを飲み干してごちそーさま。


地味と不良、喧嘩をしてもこうやって元通り。


謝るなんて小っ恥ずかしい言の葉は俺達の間には一切不要なんだ。



そうだろ? 兄貴。




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