「ヨウ、お前は……戻れ。立つべき場所に。リーダーの座は……返していいな?」

「ああ。留守にして悪かったな」


「となれば……自分も副リーダーに戻るわけだが……少し惜しいことをしているな。ケイ、副リーダーをやってみないか?」


シズから眼を投げられて、


「え゛?」


冗談じゃないとかぶりを左右に振って遠慮も遠慮。

頭を下げて勘弁して下さいと申し出を断った。


もう二度ごめんだね、あんな重苦しい仕事は。副であろうとリーダーには変わらない。

皆を纏めたり、意見を聞いたりしてチームの今度を決めないといけないし、俺の苦手とする作戦とかも率先して立てなきゃいけない。


数日の間、副リーダーを経験して俺は無理だと思ったね。柄じゃないや。


それに副リーダーになれば?

敵チームの不良さんからもっと白眼視されるわけで? 


ふっ、ただでさえ異色コンビ・ジミニャーノ舎弟くんなんだぜ?

もーっと喧嘩売られるだろう!


ごめんだごめん、ぜぇったいしたくねぇ!


無理だの一点張りを貫き通す俺に、シズは微苦笑交じりの残念そうな顔を作った。


「今回の計画の首謀者は……ケイなのにな。皆を動かしていた……じゃないか」

「そりゃ舎弟としてだよ」


俺は敢えて舎兄と視線を合わさず返答。


一応まだ俺達は喧嘩中だからな。

これくらいの意地悪は許してくれるだろ?

俺なんてなぁ、ヨーイチパーンチを顔面に受けたんだからな! 意地悪したって許される筈でい!



「ヘイヘイヘーイ!」



ワタルさんが大きく挙手。

今までの重々しい空気を散らすようにウザ口調を撒いて、


「ワタルぴんと同じ人。この手にと~まれ!」


手の甲を見せてきた。


「五十嵐に負けて悔しい人、この手にと~まれ! あんな不意打ちに負けてダサいと思うのは僕ちゃーんだけ? これから皆で打ち負かすと思っているの僕ちんのみ? わぁお、ぼっち勘弁!」


チームを取りまとめようと、いや前以上に結束を深めようと意図する行動を起こすワタルさん。


惚れそうですよ、ワタルさんのそーゆー優しさ。

ワタルさんって見た目によらず本当に優しいんだよな。

いつも人を小ばかにしているけれど、ウザ口調でもあるけれど。俺は彼のそういう優しさに尊敬を抱いている。


真っ先に俺はワタルさんの手に飛びついて重ねた。

それを見た響子さんが、キヨタが、どんどんと手が伸びて副リーダーに戻ったシズが手を重ねた後、最後にヨウが戸惑いがちに、だけどしっかりと手を重ねてくる。


相変わらず、似合わないな。

不良が青春くさく心を一つにするとか。


でもいいじゃん?

不良でも地味でも同じ青春真っ只中なんだし……な?


ヨウは腹筋に力を入れると一呼吸置いて、掛け声。

それは仲間を、チームを、改めて理解した決意表明でもあった。



「打倒五十嵐だ。今度は真っ向から……勝負をしかける。全員でいくぞっ!」



それでこそ我等がリーダー!


ヨウの掛け声と一緒に俺等は声音を張った。


ほら、これでチームは一つになった。

重ねている沢山の手の温もりが一つになるように、俺達の心も一つになる。


仲間を思い過ぎるヨウは気付いた。

単独で行動を起こすのがチームのためじゃなくて、チームの意見を聞いて動くのが真のチームだと。


だからチームに呼び掛ける、全員で打ち負かすぞ、と。


そういうもんだろう?


一人じゃなく、みんなで動くもんがチームだろう?

赤信号皆で渡れば怖くない、喧嘩だって皆でやりゃあどうにかなる。



チームって、きっと、そういうもんだろう? 



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