話は戻し、チームメートから詰問されたヨウは、決まり悪そうにそわそわソワソワ。
「説明は明日にしねぇ?」
ちゃんと順を追って説明できるよう準備してくる、というとんだご都合発言をかました。
眉をつり上げたシズが発言者に痛恨の拳骨を炸裂。
痛いと頭を押さえるヨウは冗談だと小さく反論をした。
いやいや冗談じゃ通せないだろ、今は。
「ヨウ……説明……早くしろ。今はお前、ただのチームメート……リーダーは誰だ? ……チームの輪を掻き乱したのはだ・れ・だ?」
珍しくシズが凄む。
それなりに怒っているのかもしれない。
「わ、わーったよ。ちゃんと悪いと思っているから。手前で結成したチームの本当の意味を……分かっていなかった俺のせいで迷惑を掛けた自覚もある。順を追って説明するよ」
ヨウは語る。
それこそ既に俺達が知っている情報から。
先日の土曜の決戦、『漁夫の利』作戦で自分達はやられた。
主犯は五十嵐竜也。
中学時代にヨウ達が伸したいけ好かない不良野郎。
日賀野と決着をつけようと三階にいたところを、前触れもなしに現れて中学時代の戦法を仕返しとして仕掛けられた。
ヨウと日賀野は各々仲間達がヤラれる最後を見届けさせられて、トドメを刺すように奴等にやられたという。
五十嵐は策士で日賀野以上に質が悪い。
ハジメの一件を噛んでいたこともさながら、自分達の間に亀裂を入れ、今回の決戦に発破をかけたのもそいつの引き金だったらしい。
自分達の仲間意識を利用し、仲間を犠牲者にさせることによって二チームが激突させる起爆剤を作り上げた。
更にヨウ達が失神する間際に、五十嵐は言葉を残した。
「これからも飽きるまでお前等を甚振る。仲間を使ってな」
輩の目的は中学時代の面子を潰すことにある。
けれど、それ以上にあの当時中心人物になっていたヨウと日賀野を完膚なきまでに叩きのめしたいと、ヨウは五十嵐の本心に気付いたらしい。
だからヨウはチームと距離を置いた。
仲間を危ない目に合わせられなかったから。
最後の最後まで仲間を誰一人助けられず、ヤラれるとこを見届けさせられてしまい、リーダーとして不甲斐ないこと極まりなかった。顔向けもデキなかった。
せめて五十嵐を仕留めて仲間達の安全を、そうヨウは独り善がりを思ったそうだ。
距離を置いている間は単独で五十嵐の情報を掻き集めていたらしい。
どうにか五十嵐という男を討ち取りたかったのだとヨウ。
ハジメを、仲間を、チームを甚振りやがった男を、どうしてもこの手で討ち取りたかった。
仲間を守れなかった全責任が自分にあるんだと思っていたらしく、随分独りで抱え込んで思い詰めていたようだ。
正直、俺達の演技にすら気付けなかったと言う。
「チームの大敗を考えていなかった。その……悪かったな。テメェ等の実力を舐めていたわけじゃねえんだけど」
気持ちが先走り先走り、今に至るのだとヨウは真情を吐露してくれる。
まったくもって傍迷惑で仲間思いなリーダーだ。
どうしてそんなにも大切なことをチームに明かしてくれなかったんだろう。
ハジメのことなんて、もろ俺達の敵討ち事情に当て嵌まるだろうに。
すぐ熱くなって周りが見えなくなる。
そんな優しいリーダーに俺は苦笑するしかなかった。
「なるほどな……お前なりに……苦しんでいた。そこは……理解する。だが、チームに……メーワクを掛けた。それも事実だ」
シズは厳しくヨウを諌めた後、
「今後の行動で償え」
笑って今回の騒動を許した。
うん、誰もヨウを咎めようなんて思っちゃないさ。
ただ分かって欲しかっただけなんだ。チームの意味を。
チームを守るのはリーダーの仕事、確かにそうかもしれない。
だけどチームやチームメート全員を守るなんて、そんな大それたことがしなくていいんだ。俺を含むチームメートの誰もが言うほど強くはない。
でも弱くもない。
チームは全員で守るものだろ? 全員で力を合わせりゃどーにかなるって。