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放課後、久しぶりにヨウが俺等と一緒にたむろ場に足を運んだ。
ははっ、取り敢えず俺とヨウは喧嘩していますんで?
行く途中の雰囲気は最悪だったんだぜ! イェーイもう二度とヨウとは喧嘩したくないって思うほど、恐かったんだぜ!
真面目に圧死するかと思うくらい空気が悪くてわるくて、吐き気が込み上げてきたよ。
いやはや、連れの弥生やワタルさんにはご迷惑お掛けしました。利二がいてくれたら助かったんだけど、バッドタイミングで今日はバイト。
チクショウ、心腹の友がいなくて心寒いんだぜ! 利二っ、俺は寒気と恐怖に震えているぞー!
ほーんと空気が悪くてさ、二人も大層居心地が悪そうにしていました。スンマソです。
俺自身も大変居心地が悪うございました。
しかも殺意とかバリバリ向けられて、ハハッ、ガチ恐くて涙が出そうだった。トラウマ不良がまたひとり増えそうだったよ。
いや、トラウマだ。
ヨウもトラウマ不良決定だ!
グーパンチとかなぁ、痛かったんだぞ!
恐い顔してビバ、本気のヨーイチパーンチカッコ容赦一切なしカッコ閉じるとかなぁ、ガチ泣きたかったんだぞ!
無事に仲直りをしたらもう二度とヨウとは喧嘩をしない、売らないし、買うこともしない……仲直りしても、まともに喋れるかなぁ。
なんかもう、先行きが不安で仕方が無いぞ。
日賀野不良症候群のように、荒川不良症候群にかかったらヨウにどう責任を取ってもらおう。
はぁーあ、舎弟ってつくづく大変だよ、ほんと。
ところかわって、ヨウの話をしてみたい。
久しぶりにたむろ場に来た舎兄はヒッジョーにご機嫌ナナメ。
全員が集まるまで、倉庫の四隅で煙草をふかしていた。
なんとなーく睨まれたりしたけど平然とする振りをした。
内心では大号泣だったけど、表向きはザ・日賀野モード。シニカルにニヒルチックに嫌味キャラを貫き通してやりました。
チームを止められるもんなら止めてみろ的態度で挑発してやりましたとも。
よって、更なる怒りを煽り、俺の肝は縮こまっていた。
頑張れ俺、やる時はやるんだぞ俺。
こ、怖かないんだぞ! 怖いという現実に陥ったら、ネガティブまっしぐらだしな。怖くない……怖くないぞ。
季節の温度は思い込み原理を使って、怖くない、寒くもないし畏怖も感じない。うん、思い込み万歳! ちーっとも利かなかった!
さてさて他校に通うシズ達、中学生組の全員が揃うと集会開始。
早速ヨウがシズにこれはどういうことだと直談判した。
開口一番に五十嵐の一件について尋ねてくる。
「最初がそれか」
久々に顔を出したくせに、チームを放っておいてるくせに、シズは呆れ口調で肩を竦めた。
「ケイにある程度……話は聞いたんだろ? ……そのままだ。目的を変えた」
改めて突きつけられる現実にヨウはこめかみをさすり、唸り声を漏らす。
「テメェな。五十嵐のタチの悪さ知っているだろ? ……今のままじゃ無理だろうが」
だけどリーダーシズは意志を変えない。
今の目的は打倒五十嵐だと。
何故ならヨウが留守の間、何度も五十嵐の回し者に襲われた。
ヤラれっぱなしなんて趣味じゃない。
何よりこのまま終わるなんてチームの気が済まない。
これは一人の意見じゃない、全員の意見だとシズ。
鋭い眼光でヨウを見据える。意志の強いシズの眼にヨウはちょいと戸惑っているようだった。
「五十嵐に……自分達は喧嘩を売りに行く……仕返し、とでも、言っておこうか? 明日にでも動くつもりだ……」
「は?! その体でか?! ケイの突拍子もない提案だろ?!」
「体は関係ない……勝つことが最優先だ」
シズは素っ気無く返して意思の表明を濃くする。



