ははっ、死のカウントダウンは始まっているなんだぜ! 余裕か?
んなの一抹もあるわけねぇだろーよ!
天下の荒川庸一さまに喧嘩を売ろうとしているんだぜ?! 余裕どころか、本当は泣きたいっつーの!
用具倉庫裏まで連れて来られた俺は、まずヨウに副リーダーなのかって尋ねられた。イエス、俺は頷く。
次に別の目的は何だと尋ねられた。
簡略的に説明する、土曜日の決戦で大敗した奴等を打ちのめす目的に計画変更したって。
若干向こうの温度が下がるのを感じつつ、ヨウは更に質問を重ねてくる。
考案したのはお前か? と。
力強く頷いてやった。
オレサマが皆に言いましたとも! ハッハッハッハ!
ヨウが望んでいない、寧ろ避けて欲しかったことをやってやりましたとも! ザマァ!
「だって悔しいじゃん? ヘンチクリン乱入者に負けてさ? チームの皆に、『日賀野達の前にあいつ等をやっちまおうぜ?』的な意味合いで提案。皆は受け入れてくれました。
おわりっす、兄貴。ご質問は?
気持ち的に混乱中であらせられますのに、更なる混乱を招いたら申し訳ございません」
「ケイ。副リーダーなら今すぐ目的を当初に変えろ」
「いやいや、なんで? チームは納得してくれたぞ?」
「俺等の目的はヤマト達だっただろうが。五十嵐のことは……暫く放っとけ」
「チームはヨウみたいに意気地なしじゃないから? 今更撤回なんて聞かないと思うけど?」
途端に向こうの温度が絶対零度に……ははっ、恐いぜマジで。
だけど重ねて言ってやる。
「そうじゃないか! 五十嵐が恐くて、一旦リーダーを降板したんだろ! 俺との約束も破って!」
当て付けのように言ってやるんだ。
完全に火に油な発言だと分かっているから、ほっらぁ、向こうの怒りがピークに。
「ちっげぇよ!」
胸倉を掴んで否定してくるヨウに、何が違うんだと俺は大反論。
「意気地なしだからリーダーを降板したくせにっ! お前と違って皆、意気地のある奴等ばっかりだから?
今日明日にでも五十嵐のところに喧嘩売りに行くつもりだよ! どーぞ、ヨウは気持ちの整理がついてからっ、こっちに戻ってくればいい!」
「はあ?! おまっ、バッカじゃねえの! 今、喧嘩売りに行ったって犬死にだぞ!」
「やってみないと分からないじゃん?」
「ケイ、テメェは仲間の何を見ているんだ。ぜぇって無理だろ! チームメートをまた病院送りにさせてぇのかよ!
……五十嵐は何よりも甚振りを楽しんでいるんだぞっ。やめろっ、馬鹿なことしたって結果は一緒だ! ケイ、テメェはナニ馬鹿なことをチームメートに提案しているんだよ」
「勝てばいい。俺は、俺達は勝てばそれでいいよ!」
俺の言葉にブッツンと血管の切れる音。
わぁお。心中で十字を切った刹那、ガンッと外部からの痛烈な衝撃。
尻餅つく俺に「そんな馬鹿だとは思わなかったぜ」忌々しそうに見下ろしてくる舎兄が一匹。
俺は狂ったように高笑いを上げた後、薄ら笑いを浮かべて殴られた右頬を手の甲で拭った。
「じゃあ、止めてみれば? 今のチームメートを。お前の力で止めてみろよ。皆、馬鹿承知の上でやるつもりだから!」
「ケイッ……ざけるなよ。ざけるなよ!」
人の背中を一蹴りして立ち去るヨウの背中を見送る。
今しばらく見送った後、俺はドッと身震い。全神経が悲鳴を上げているかのように、カタカタと震えて震えてふるえて恐怖心を拭おうと努力した。



