今朝の出来事で、単独行動を起こしていたヨウも仲間達の様子が気になり始めたみたいだ。
多分、あいつのことだからチームメートは大人しく療養してくれていると思っていたんだろうけど、甘い! 俺達はそんな大人しい奴等じゃないぜ!
休み時間もちょいっと顔を出してくれるようになった。
そんなヨウを拒むわけもなく、俺達はいつもどおり迎え入れて駄弁った。
ヨウ自身、チームの事が気になっていたみたいだけど、あいつから質問がないから俺達も答えないし教えない。
だけどヨウに質問されたことはちゃーんと答えるようにもしている。
あいつから歩んでくれるように。
これは俺がチームに考案したことだ。
こうでもしないと、あいつは気付いてくれない。
チームの存在異議ってヤツをさ。
ヨウはチームの近状について、俺達から話してくれることを望んでいる。
同じように俺はヨウが自分からチームに歩んでくれるのを待っている。いつまでも、待っている。
「なあ……今、チームはどうなってんだ?」
ある日の昼休み。
体育館裏で飯を食いながら駄弁っていたら、ついに痺れを切らしたヨウが質問を飛ばしてきた。
「どうって言われてもねんころころ」
ワタルさんはいつもどおりウザ口調でチームは今、本来のリーダーが不在の状態だと笑声を漏らした。
それは分かっているんだとヨウは決まり悪そうに頭部を掻き、自分が離脱している間のことを聞く。
質問されたら答えるのが流儀であるからして? 間髪を容れずに弥生が答えた。
「来る日も来る日も喧嘩ばっかりだよ。ウーンザリしてきた」
「……は? テメェ等、その体でか?」
そう言ってくれるヨウも多分、隠れて喧嘩をしちゃっているんだと思う。五十嵐の情報を掴むために。
なんで喧嘩をしているんだとヨウは眉根を寄せた。
「しょーがないじゃん、向こうから襲ってくるんだから」
弥生は肩を竦めながらイチゴミルクを飲む。
誰に襲われているのかは伏せたけど、喧嘩については察しの良いヨウであるからして?
まさか、と顔を顰めて思案。
数十秒自分の世界に浸っちまう。
そろそろ(仮)副リーダーの出番かなぁ。
「ま、丁度良いと思うよ。今の俺等の目的は日賀野じゃないんだ。向こうから仕掛けてくるなら、やり返せばいい話だよ」
「おーっとさすがは現副リーダー! 言うことカックイイねいねいねーい!」
あざーっす!
カックイイはお世辞として受け取っておきます!
「……ちょっと待て、それはどういうことだ?」
ヨウの表情が険しくなる。俺は笑いながら答えた。
「まんまの意味だってヨウ。今のチームの目的は日賀野達じゃない。別の目的で動いている。
ちょいと本来のリーダーが不甲斐ないから? 目的変更は俺が提案したんだ。現リーダーもチームメートも受け入れてくれたよ。すーんなりと」
おーっと向こうの眼光が鋭くなってきた。怖い恐いKOWAI!
だけど決めただろーよ。憎まれ役を買うって!
ああっ、嫌味キャラになれ田山圭太。田山ガンバ、俺ガンバ! ま、負けるな俺! 日賀野大和のように憎まれ屋になるんだぞ!
「ちょっといいか?」
個別に呼び出されたから、俺は内心泣きつつも、表向きでは「分かった」と頷いて体育館裏から用具倉庫裏に移動。



