日が半分ほど暮れた紫色の空の下。
たむろ場にしている古びた倉庫に足を踏み入れると俺等以外の全員面子が揃っていた。
ヨウとハジメはいないけど、タコ沢も来てくれているし、仮チームメートの利二も顔を出してくれている。
どうやら俺達待ちだったらしく、
「遅い……」
開口一番に現リーダーのシズから文句をぶつけられた。
ううっ、ごめんって……地獄の説教タイムを受けていたんだから仕方が無いじゃないか。
全員が揃ったところで、現リーダーのシズが欠伸を一つ零すとポリポリ頬を掻いて肩を竦めた。
「あまり柄じゃないが……不甲斐ないリーダーが不在なんだ。仕切らせてもらう……眠い……が、まあ頑張る……今からの目的は、ヤマト達打倒から五十嵐打倒に変更だ」
今回の大敗はチームにとっても大打撃、そして五十嵐は中学時代の因縁の不良だとシズ。
この大敗は大きな意味がある。
五十嵐がまた姿を現した以上、自分達を幾度も狙う可能性がある。
それだけ五十嵐という男はしつこいらしい。
また五十嵐が仕掛けた奇襲は、かつてヨウ達が起こした『漁夫の利』作戦に似ている。
復讐という意味で自分達を狙う可能性は十二分にあるとシズは言った。
「ケイ達には五十嵐のこと……そして『漁夫の利』作戦の詳細を教える。まず目的変更に……異存は?」
全員一致で一切なし。
ヨウは望んでいないだろうけど、俺達はこれを望んでいる。
ちなみにこの目的変更は俺が呼び掛けた。
まずはキヨタ、モト、ワタルさんに、そして三人が皆に、各々目的変更の呼び掛けをして現在に至る。
今の俺達は打倒日賀野達だと言っている場合じゃない。こんな情けないやられ方をしたんだ。
打倒日賀野達の前に、打倒五十嵐だろ? なあ?
それにきっとヨウは自分だけで五十嵐を潰す気でいる。
最後まで目の前で仲間達がやられたところを見ていたみたいだから、どーしても許せなかったんだろう。
俺達がフルボッコをされた以外にも、まだ何か理由はあるみたいだけど、とにもかくにもヨウは仲間をシズに託して一人で五十嵐を討ち取る気でいるんだ。
仲間を巻き込まないように。
そして無事に討ち取ったらチームに復帰、みたいな妄想でもしているんだ。
あいつはバカじゃないのか?
どーせリーダーとして一人で五十嵐に挑むつもりだろうけど、一人で何ができるんだよ。
向こうは随分とお仲間がいたじゃアーリマセンカ。
ったく、不甲斐ないぜ、リーダー。
べつにお前の力量が不甲斐ないんじゃないぞ。お前のチームを想う気持ちが不甲斐ない。
この大敗はチームのことであってお前の大敗じゃない。
何のためにチームを結成したんだよ。
お前さ、仲間を信じると言っていただろう?
なのに、どうして現実に怖じて自ら仲間と距離を置こうとするんだよ。
舎弟の俺も優しいばかりじゃないから?
時に心を鬼にしてヨウに……間接的だけど喧嘩を売ろうと思う。
周囲が見えなくなったらいつも指摘していたけど、こればっかしは自力で気付いてもらうことにするよ。チームのあり方ってヤツをさ。
「しかし自分だけじゃ荷が重い……副が欲しいところだ」
シズが意味深長に俺を一瞥してくる。
推薦が欲しいようだ。
周りにいるチームメートを見やって俺は誰が良いだろうと腕を組む。
ここはやっぱり響子さんやワタルさんじゃないか? ヨウやハジメが不在の今、チームを先導できるのはこの二人しかいない。
きっと皆同じ気持ちなのだろう。
俺に視線を留めてうんっと頷いてくる。
「決まり……だな。ケイ、お前が副だ」
そうか、俺が副か。決まりだな……え、なんだって?



