いやだってよ?
ありえなくないっすか?
リーダーの決断。
お前の気持ちは分かるけど分かりたくない。俺との約束は破るし。
だぁあっ、結局五十嵐のことも、『漁夫の利』作戦も教えてくれなかったし!
何だよ何なんだよ、俺は不貞寝するからな! するからな! しちゃうんだからな! 不良だからってなぁ、偉そうにするなよ! 怖かねぇよ!
……ごめんなさい、嘘吐きました。不良は怖いです。
「おいケイ……ケイ? 実は怒っていたりするか?」
あ゛ん? 母音に濁点つけてあ゛ん?
フーンだ。怒ってねぇよ!
俺って寛大だから? あははははっ、怒ってねーもん! 不貞腐れているだけだもんね!
まだ入院の日数もあるし?
お隣の庸一さんとはフレンドリーに、超ちょうちょう仲良くしたいじゃないですか? ね!
「なーあ」
ヨウがカーテンを開けてきた。
「あらヤダ庸一さんのえっちぃ」
俺はこめかみに青筋、引き攣り笑いを浮かべつつ布団から顔を出す。
「何事もモラルは大切デスヨ。カーテンオープンはお返事をしてからとお決まりなんデス。お着替えでもしていたら、どーするんデスカ?」
「……お前、めっちゃ怒っているだろ?」
「怒っていないヨ。ナイナイ。怒る要素なんてどこにも無いですカラ? では、お隣の庸一さん、オヤスミナサイ。ポク、眠いんデ」
うふふのうふふっ、舎兄に微笑んで、めいっぱい微笑んでカーテンを閉めた。
今の俺なら普通に不良と喧嘩ができそう。
あーあ、くそっ、何もかもが腹立たしいっつーの。
お前に最後までついて行くつった俺がバーカみたいじゃないか。
まるで仲間を遠ざけるように話題から逃げて……ん? 遠ざけるように。
俺はちょっと冷静になって物事を考えてみた。
ヨウの性格上、イチにもニにもサンにも仲間を優先する。
ハジメのことで特に仲間意識が高くなった。
その先の未来で五十嵐に大敗し、ヨウはリーダーを一旦降りると言った。
それは自分自身の気持ちが混乱しているから、リーダーとしてチームを纏められない。チームを混乱させるかもしれないから。
舎兄は言ったな。
五十嵐に襲われたこと追々考えるとして、完治したら日賀野チームとの決着を一から練り直そうと言っていたよなぁ。
でもさ、よーく考えてみるとおかしくないか?
優先順位的に、奇襲を掛けてきた五十嵐の方がフツーに先だろ。
五十嵐のことを解決することの方が先だろ。
あんなにも仲間がフルボッコ、ギッチョンギッチョンのメッタンメッタン、仕舞いには病院送りにされたのだから。
今までのヨウなら仲間を考えて五十嵐打倒を優先する筈。
なのにヨウは日賀野チームの決着を優先させた。
ヨウの奴、何を考えているんだ? 順位が違うだろ。順位が。
五十嵐のことも『漁夫の利』作戦のことも、その場で教えてくれなかったヨウ。
仲間内が事情を知らない俺等に説明しようとしても、「後日でいいだろ」とか言ってくれちゃって。
それじゃまるで五十嵐に負けたこと、スルーするみたいじゃんか。
スルー?
仲間意識が人三倍高いヨウに限ってスルーなんて。あいつだったらなりふり構わず、仇をとるため、仲間のために全力疾走――そういうことかよ、ヨウ。
憶測だけどヨウの考えていることが何となく分かっちまった。
それは俺が舎弟だからかもしれない。
だからこそ、俺はベッドから下りて早速行動開始。
「ケイ?」
キャツに名前を呼ばれたけど、「便所」不愛想に返して病室を後にする。



