ピピピピピ―――ッ!



健太とオイオイシクシク状況に泣いていた俺は、携帯の喧しい着信音に洟を啜った。


なんだよ、人が友情という名のやり場のない感傷に浸っているのに携帯とか。

電源はオフ、もしくはマナーモードにしとけって。

公共の場に出た時の携帯のお約束だぞ。


グズッと制服の袖口で涙を拭った俺は着信音が何処から聞こえてくるのか目で探す。


「オフにしとけって」


ケーワイだぞ、今の状況で携帯を鳴らすとかアリエネェ。グズグズに泣きながら健太にツッコまれた。


いやいやいや、素晴らしく犯人扱いをしてくれるけど、俺じゃないって。

しかも今しばらく着信音が鳴り響いている。

俺や健太、ココロのじゃなさそうだ。


ココロの持っている誰かの携帯でも無さそうだし……というか上から聞こえて?


その時だった。

一階出入り口から雄叫びのような、怒号のような声。

俺と健太は顔を見合わせて、体を起こすとココロと三人で柵に向かった。


この廃工場は中央部が筒状だから柵越しから一階や三階の様子が見れるんだけど、一階を見下ろして吃驚仰天。


み、見知らぬ不良達が飛び込んで来たんだけど?!

な、なんだ、いきなり見知らぬ不良……あ、まさか!


「健太っ、お前のチーム……援軍を」


キッタネェ! 素っ頓狂な声を上げる俺に健太は眉根を寄せて一階光景を見つめる。


「いや援軍を呼ぶのはアズミの仕事。そこの彼女が持っているアズミの携帯からしか連絡できないよう、ヤマトさんは考えているんだ。お前のところじゃないのか? 圭太」

「バッカ、俺等のところは浅倉さんしか協定結んでいないし……あんな不良達……おい嘘だろ」


飛び込んできた不良達は皆、制服じゃなく私服姿なんだけど(制服を着ていないとヤンキー兄ちゃんってカンジ……)、入るや否や一階にいる仲間達に複数単位で襲い掛かっていた。


俺のチームメートもさながら、健太のチームメートも襲い掛かっている。


あっという間に喧嘩をしている奴等に群がって、放置されている鉄パイプや自分の素手で予告ナシの喧嘩開始。仲間が奇襲を掛けられていた。


なんだよ……これ。


まったくの予想外なんだけど。


前触れもない奇襲に二階にいる俺等は勿論、両チーム戸惑いと混乱に突き落とされた。

一階にいるチームメート達はどうにか素早く状況判断をして一時休戦、第三者の乱入を迎え撃つ。


だけど、数十秒前までお互いにぶつかり合っていたもんだから、体力の消費は激しくて第三者の乱入に応戦できていない。


「ワタルッ、なんじゃいこいつ等!」

「俺サマが知るかってぇーの! アキラッ、アッブネ避けろ!」


一階ドラム缶山麓辺りでワタルさんと魚住が複数の不良に苦戦。  

各々手腕はある筈なのに、人数の多さと体力の差にやや押され気味だ。


刹那、ワタルさんが鉄パイプで横っ腹を殴られてドラム缶に体をぶつける。



「ワタルさん!」



俺は思わず手摺を握り締め、身を乗り出して仲間の名前を呼ぶ。次いで魚住もワタルさんの後を追うようにドラム缶に体をぶつけて、その
場に崩れた。


「アキラさん! 全治二週間の怪我を負っているのに」


健太が悲鳴に近い声で仲間を呼んだ。


一方で、シズと斎藤が第三者に囲まれて執拗にフルボッコ。


輪になって二人を殴る蹴るの暴行をしている。

お互い抵抗はしているんだけど、歯がまるで立っていない。まんまフルボッコにされている。


それに気付いたキヨタと紅白饅頭双子不良が助けに行くんだけど、立ちはだかる数の多さに輪まで到達できず苦戦していた。