「仲間のために。それだけはグループが二つに分かれても変わらないみてぇだな? 友情を感じるなう」


だがそれが命取りにもなる。

意味深な台詞、短い言の葉だが二人はそれだけで察してしまう。


こいつに発破を掛けられたのだと。

そして彼が口にしている『漁夫の利作戦』に肝を冷やしていた。


漁夫の利作戦と呼ばれる作戦は自分達が過去に使った喧嘩スタイルだ。



まさしく漁夫の利というべき戦法。



二グループに発破を掛けて喧嘩をさせる。


両者が弱ったところを第三者の自分達が仕掛けて勝利をもぎ取るという卑怯極まりない戦法なのだが、これは高校不良グループを伸した時に使った戦略なのだ。


仲間内が高校不良グループにやられ、実力不足の自分達ができる敵討ちとしてこの戦法を編み出したのだが、しっぺ返しのように自分達に返ってくるとは。


ということはお互いの仲間をヤッったのはこの男か!


ハジメをリンチにし病院送りにしたのも、ホシやアキラに二週間程度の怪我を負わせたのも、両チームに発破を掛けたのもこの男が……。


すべてが見えた二人はギッと五十嵐を見据えた。


「休戦だ」

ヤマトの一言に、

「了解」

ヨウは同意してみせる。伸す相手として優先するべき輩がいるようだ。

だがしかし、五十嵐は余裕のよっちゃんだと鼻で笑った。


ガンを飛ばしてくる二人に怖い怖いと肩を竦め、にやりにやりガムを噛んで風船を作り、割って口についたそれを舌で掬い取る。


「目には目を歯には歯を。仲間をダシにされた挙句、自分達の作戦を実体験する気分はどうだ? 超ちょうちょう長かったぜ。これを決行するまで」


仕返しすると決めた頃は丁度忌まわしい中坊達が二グループに分かれた頃、その頃から手ぐすねをひいていた自分は各々にちょっかいを出していた。


お互いがお互いに過度なちょっかいを出しているように見せかけて。おかげさまで中坊達は踊るように仲をどんどん亀裂させていった。


最初こそ分裂しておしまいだったろうに、それが外部の悪戯によってどんどん仲が悪くなる。見ているだけで愉快愉快。


仲間意識の高い輩だからこそ、亀裂する進行が早かったのだ。


エスカレートする対立に笑う自分、とても愉快だ。今も超愉快なう。


「おっとそんな怖い顔してくれるなよ。照れるじゃねえか」


五十嵐は目を細めて口角を持ち上げる。


「漁夫の利作戦はこれからだ。分かるだろう? これから起こる楽しい出来事。漁夫の利は第三者が動いてこそ意味がある」