「ちょーっと待ちなさいよ! 古渡って胸だけデカイアホ女は何処! ちょっとアンタ! ハジメの仇―――ッ!」


「うぇえええ?! アズミ、カンケーないもん! 来ないでよ!」


「ま……待ってぇ。弥生ちゃん。お、置いて行かないで」


なんだか可愛らしい追いかけっこをしているのは喧嘩できないであろう女子組。


ゲーム機片手に弥生から逃げ回っているアズミは「たっくん助けて!」画面に向かって救助要請。


いやいや、アズミさんよ、あんたそれ、乙女ゲーだろ?


二人の後を追うココロは、どうすればいいか分からず取り敢えず、弥生を追い駆けているみたい。


うん、怪我しない程度に頑張ってくれよ。女子組。

今のところ怪我はなさそうだけど。


さてと、各々どんぱちしている最中、俺はというと倉庫内でチャリを漕いでいた。


別に有意義にチャリを漕いでいるわけじゃなく、このチャリは借り物だから何処に置こうかと探している真っ最中。


いや置く時間が無かったんだから仕方がない! チャリは俺の最大の相棒だけど、今は邪魔だな!


それに……みんなのお相手が決まっているんだ。必然的に俺も決まるだろ。


「ケイ!」


チャリに乗っている俺を追い駆けてきたのは健太。来たな元ジミニャーノ! 

だけど、ちょい、ちょいタンマ! チャリくらい置かせてくれ!


これは利二のチャリなんだから極力綺麗に返したいわけだ!


俺はフルスピードでチャリを漕いで大きく旋回。

十二分に健太と距離をあけたことを確認して、俺は急いでチャリから下りると階段付近の壁際に立てかけた。鍵を掛ける暇は無い。


チャリを放置すると、俺は階段を一気に駆け上る。


分厚い鉄板でできている二階の床は大きな衝撃が加わっても大丈夫そうだ。


二階にもドラム缶の山が積んであるみたいだし。


ふーっと息を吐いて、俺は階段を上ってくる健太を待ち構える。


カツンカツン、足音を鳴らして二階に上がってきた健太は俺の姿を捉えるや否やシニカルに笑みを浮かべてきた。


「チャリ、置いていいのか? お前の武器だろ?」

「るっせぇ。俺ってヤサシーから敢えて武器は捨てたんだよ」


「それが命取りになるぜ? ……よくもアキラさんとホシを……仇は取らせてもらうからな」

「は? 何の話だよ。大体仇ってのはこっちの台詞だっつーの。ハジメをよくも」


対峙する俺等は怒気を含ませながら睨みを飛び交わせる。


だけど脳裏の片隅に蘇るのは中学時代の思い出。



楽しかったアノ頃、一緒に日々を過ごしたアノ頃、そして普通の出逢いをしたアノ瞬間、俺達は確かにお互いを認めて、


「ケイっ、おれはお前等を許さないっ。仲間にした仕打ちっ、償ってもらうからな!」



田山田とか山田山とか馬鹿を言って、  



「健太っ……今の台詞。そっくりそのまま返す!」



笑い合っていた筈なんだ――。



⇒#07