「向こうの力量は分かっているんだけど、何となく認めるのが悔しいんだよな。認めるのが悔しい。先にオレが出逢っているからこそ、後からヨウさんに出逢ったケイが舎弟になって悔しかった……だろ? 五木。気持ち的にそんなカンジじゃん?」



「ああ、そうだな。仰るとおり、と言っておく。
別に自分は荒川さんを認めていないわけじゃない。

いや、片隅では認めているさ。
田山の舎兄はあの人しかいないって。

ただそれを認めるのが悔しいだけだ。こればっかりは自身の問題だからな、どーしようもない」


「ほんとほんと。スゲェー分かる。五木がチームに入りたくない気持ち、スゲェ分かる。

だけどさ、アンタ、ケイがヨウさんの舎弟でも舎弟じゃなくてダチとして続けていくんだろ?

じゃないとこうやってオレ等に手を貸さないだろうし、結局のところ向こうが“舎兄弟”でもカンケーねぇじゃん? 向こうは向こう、オレはオレなんだし」


彼から同意を求められる。

返事をせずにいると、


「今までどおり、オレはヨウさんの背中を追い続ける」


モトがこれから先の未来に誓いを立てた。

嫉妬心に駆られようとも、やきもきする一晩があろうと、ケイは大事な仲間。彼には嫉妬を抱くだけで嫌いではないとモトは頬を崩す。


勿論、ケイを思い付きで舎弟にしたヨウも嫌いじゃない。大尊敬している。


今も昔もそしてこれからも、ヨウの背中を追い続ける。


ケイとも好敵手として、仲間として接し続けていくつもりだ。

自分は舎兄弟を見守っていくつもりなのだと胸の内を明かす。


「……ケイはリーダー気質なのかもしれない」


「田山が?」


「あいつは気付いていないだろうけど、ヨウさんに似てきてリーダーシップが撮れるようになっているんだ。
ヨウさんに似て仲間のためなら、何処までも走る男だ。無自覚みてぇだけど。

いつか、ケイは舎弟を作ると思う。

それがキヨタなのか、それとも別の奴なのかは分からない。
オレは五木でもいいと思っているんだ。

そしたらケイは調子を乗らずしっかりしてくれそうだし……って、ナニ笑ってるんだよ?」


「いやお前はよく田山を見ていると思ってな。よく田山の性格を把握している」


「そりゃあ、ヨウさんの顔に泥を塗られたらヤじゃん? だから仕方が無く見ているんだよ。こっちが面倒を看ている気分にならぁ」


仕方が無しという言葉に、またクスッと笑声を漏らす利二。

訝しげに見やってくる彼の背後を指さしてやる。


モトが振り返ると、そこにはいつの間に立っていたのか、ぶすくれているキヨタの姿が仁王立ちしていた。


睨みを利かせてくるチビ不良に思わず後ずさりをし、


「な。なんだよ」


恨めしい顔を作る親友に生唾を呑む。


「モト……ケイさんの面倒を看てる気分さぁ。もしかしてさぁ。もしかしてさぁー? ケイさんの舎弟とか狙ってさぁー? なぁー?」


「お、おいキヨタ……誤解。すっごい誤解……」


禍々しいオーラを纏っているキヨタに、モトは専業の汗を流している。

利二はとばっちを食らわないように距離を置いた。


「モトぉ……ケイさんと超仲の良い五木さんにさ。よくケイさんのことを見ているとか、性格を把握しているとかさ、褒められちゃってさ。

俺っち、すっげぇ不満なんだけど。

モト、そーゆーことならさぁ。
ちょっと表に出て俺っちとタイマン張ろうか?

ダイジョーブ。1対1の素手勝負にするから。あ、ハンデを付けてそっちは小道具OKしてもいいからぁー。なぁー?」


「はあっ?! む、無理に決まっているだろ! お前とオレじゃあ実力に差がっ、アッブナ?!」



「バァアアアカァアア! 俺っちに一発殴らせろぉおおお! モトはっ、モトは味方だって思っていたのにィイイ! 俺っちからケイさんを取ろうだなんて!」


「だぁああ! 馬鹿っ、阿呆っ、早とちり! オレは今も昔もこれからもヨウさん一筋っ、今の状況でナカマワレはヨクナイ! ヤマトさんとの対決がッ、お前怪我人だろォオオ!」