「今が大切です。昔がどうであれ、改悛(かいしゅん)したことに意味がありますから!
あ、ちなみに改悛っていうのは心を入れ替える意味だと祖母から習いました。

昔は知りませんが今のヨウさんの顔が良い、そして好青年不良ですから大丈夫だと思います! ……不良に好青年もおかしいでしょうけど、でもでも何より頼れるリーダーさんじゃないですか!

私が言えることじゃないですが、過去はどうあれ今が大切だと思います」


ニコニコと満面の笑顔で励ますココロ。

頑張って励ます事が出来たんだぞ、とドヤ顔をしている彼女は、まったく悪気がないんだと思う。


寧ろ善意の塊で言っているんだと思う。


けど性悪な俺達は揃いも揃ってその励ましに噴き出した。


ヨウ、言われてやんの。

イケメソ乙、カワウソー。本人はといえばココロに引き攣り笑い。



「あ、ありがとな。けどなんかちっとも嬉しくねぇんだけど、ココロ……てか、テメェ等、勝手に俺を悪に仕立てるんじゃねえよ! 俺は言われるほど落ちぶれちゃことはしてねぇよ!」



ぶっ飛ばすぞオラァ。

こめかみに青筋を立て、かたい握り拳を作るヨウをからかうのも程々にして話を戻すことにする。


ココロは俺達に話してくれる。古渡の人脈が広い。特に男の人脈が広かった。


不良とも沢山付き合っていたようだし、日賀野達と関わっていてもおかしくない。


ハジメを使って俺達の仲を掻き乱そうとしていた古渡。

日賀野達の仲間になったことで、向こうチームは勝機を確信したんじゃないか。それほど古渡の人脈は幅が広いらしい。


何より、彼女自身も面白いゲームが大好きだそうだ。

日賀野達と手を結ぶことでゲームへの快感を得ようとしているんじゃ……ココロはギュッと顔を顰めた。


「彼女のゲーム好きのせいで折角できたお友達を何人も失いました。他の人も、彼女のゲーム好きで彼氏さんをとられたり……お友達同士で小競り合いをさせたり。
きっと、再会をしたらまた何かゲームを仕掛けてくるんじゃないかって……」


「ほんっと悪女だよね! でも大丈夫、ココロ! 私達そんな女には負けやしないから! フルボッコにしてやる!
待ってなさい、古渡。
ハジメの仇、ぜぇえったい取ってやるんだから。往復ビンタは絶対だよねぇ」


「そうだぜココロ、大丈夫。うちがそんな女、リンチにしてやっから! アンタは何も心配するなって。可愛い妹分の礼、姉分のうちが耳を揃えて返してやる」


弥生と響子さん、二人の友情にココロはジーンと感動に浸っているみたいだけど……男の俺等からしたらちょい怖かったり。


だって二人とも、顔は笑っているけど目が一ミリも笑ってないしさ。

言っている事が結構物騒だったりするんだよ。



「ビンタ」「リンチ」「フルボッコ」って……そりゃあ、女の子が使う単語じゃないと思う。



でもココロは二人の友情に酷く感動しているみたいだ。

涙目になりつつ、目元を擦ってはにかむ。


「実は私、ハジメさんのことで凄く、怖くなっていたんです。主犯の一人が古渡さんだって聞いて……お友達……もう失いたくないって。
古渡さん、私みたいな地味っ子を弄ぶのが大好きですから、きっとお友達ができたって知ったら。
それに彼氏さんができてるって知ったら……そ、それこそ寝取られたりしないかって」


へ? お、俺が寝取られ……へ?


「ハジメさんも、嘘だとはいえ営みのこと口にしましたから……そうやって風に人の気持ちを弄ぶかもしれない。よく知っている人だからこそ、何を仕掛けてくるかある程度が予測できるんで怖いんです」


「ダイジョーブだって。ケイが寝取られるなんざねぇだろ。
仮に寝取られることがあったら、うちがケイの根性を叩き直してやるって。もしくは女にしてやっから」


「響子さん……」


「安心しろ。ココロ、アンタの傷付くようなことは起きない。うちが起こさせないさ」


可愛い妹分に歩んで頭を撫でる響子さん。


ココロはジーンと二度目の感動に浸っているけど、会話の節々おかしくないですか? 完全に俺、響子さんにボコされる決定じゃないっすか。

女にしてやるって、それはナニをもぎ取るってことですよね。



俺が女になったら、付き合っているココロと俺の関係、大変別物になってしまうんですけど!