今度こそ皆のところに戻るためにココロを立たせて、自分もすくりと立ち上がる。


「もう大丈夫です」


綻ぶココロは立ち上がった俺の腰に抱きついて、「ありがとう」再度礼を告げてきた。

沢山元気を貰ったと見上げてくる彼女は小さく目尻を下げる。



「焦らず……強くなっていきたいと思います。古渡さんにも……負けたくないです。でもヒトリじゃむりだから、傍いて下さい」



今更だよそれ。俺も目尻を下げる。


「頼まれなくてもいるよ。ココロの傍にいる。だから、俺がどうかなった時は傍にいてくれな」



「はい」ココロは強く頷いて、はにかんで見せた。


本調子を取り戻すココロに嬉しさを噛み締めつつ、俺はさっきの初キスの味が忘れられなかった。


ココロを恋人にするだけでも、すごいことだと思うのに、満足だと思うのに、恋人になった途端これだ。



彼女に笑っていて欲しい、泣いて欲しくない、傍にいて欲しい、守りたい、触れたい。次から次に欲が出てくる。



人を好きになるってこういう感情に苛んだりするのかなぁ。人を好きになるって難しいな、ほんと。


ただ一つ、どんな気持ちに苛んでも断言できることがある。



「ココロ、みんなが待っている。元気になったことを一番に報告しろよ。特に響子さん、誰よりも心配してたんだからな」

「はい……ちゃんと謝りたいと思います。メーワクお掛けしましたし」



「また落ち込む。謝るんじゃなくて、元気になったことを笑って報告すればいいんだって。皆、それで十分だよ」



俺は誰よりもココロのことが好きだ。


例え本人を前にしても、胸を張って言えることができるよ。




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