しゃがんで拾う俺に、島さんは大丈夫だと慌ててぶつかったことを謝罪。謝罪。謝罪。なんだか詫びの嵐だ。


島さんよ、同じ地味っ子にそこまで詫びなくても……しかもビクビクと俺を見ているような見てないような。

うそ。


もしかして超怯えられている? えええっ、俺って女子から怖がられている存在?!


「えっと……島さん」

「ほんっと、すみませんすみませんすみませんっ! 田山くん、拾わなくて大丈夫だから!」


確定、完全に怯えられてやんの。

不良と関わりを持っているせいだろうなー。


ははっ……教科書を手渡すだけでも三度、頭を下げられた。


俺ってどんだけー!


……ガチな話。


そんなに俺って人相が悪い?

不良とつるんでお顔が凶悪面になった?


だったら落ち込む!

取り敢えず普通顔だとは信じたいんだけどな!


(同類の女の子から怯えられる日が来るなんて)


嗚呼マジへこむ。

女子からこんなにも怯えられる日が来るなんてへこむ。落ち込む。地面に顔面がめり込んじまう。


ありえないんだぜ!

外貌も中身もフッツーっ子なのにこうやって女の子にビクビクと怯えられているんだぜ!


田山圭太、あんま経験したくない初体験にショッキング!


でも、まあ、気持ちは分かる。



俺も今は不良達と仲良くやっているけど、ヨウやその友達に怯えていた時期があったから。


胃と心臓が大号泣していたっけなぁ。


いやぁイイ思い出。


今でも見知らぬ恐ろしい不良に出逢ったら、胃と心臓が一緒に慟哭するんだけどな!


誰かと繋がりを持つ。

それは本当に人生を左右をすると思うよ。


こうやって同類の女の子に怯えられたら、尚更な。


だけど後悔はもうしていない。

ヨウ達と繋がったこと、ヨウの舎弟になったことに俺は後悔をしていない。


不良という点で怯えることはあっても、ヨウ達不良と繋がったことに今は感謝をしているくらいだ。


あいつ等は俺にとって大事な友達、仲間なんだから。


「はいこれ」


俺は拾った残りの教科書を島さんに渡して、さっさと退散することにした。


去り際さえも頭を下げられたけど、


「気にしてないよ」


飛びっきりの愛想笑いを向けて謝罪を止める。

「こっちこそごめんな」

ぶつかったことを詫びて廊下を出る。

向けられる島さんの視線に“意外と怖くない”と、含みある眼が飛んできた。

寧ろ背後から「フツー」と聞こえてきたけど、気にしちゃ駄目だ俺。


ツッコミ魂を燃やしちゃ駄目なんだぞ俺。


間違ってもまだ俺に怖じを抱いているであろう島さんに、


「フツー以外の何者でもない!」


と返したら、逆効果で怯えさせてしまうだろう。


くそう、まさか女子に怯えられるなんて。

しかもクラスメートから怯えられる日が来るなんて。


これはこれで別の意味で溜息が出てくる。


ズーンと重たい二酸化炭素を吐いた俺は、ぎこちない足取りで移動教室場所に向かう。


はぁーあ……本当に不良になっちまおうかなぁ。煙草だって吸えたんだし。


ええいっ、このナリで超怯えられているのならば、いっそキンパにして皆をビビら……駄目だ。

ウケ狙いでしかねぇ。

笑い者になるのがオチ。


俺がキンパ、似合うはずがない。


んでもってそんなことをしたら担任の前橋から呼び出し。

学年主任も出てきて、ううっ……保護者呼び出し。

三対一でお話し合いという名の地獄が俺を待っているっ! 俺、死亡フラグ! なので髪染めはできぬ!