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【某区二丁目路地裏】



「――アキラっ、おいアキラっ。ホシ! 何があったっ、おいホシ!」



数日前の暮夜(雨天)。

バーで寛いでいたヤマトは仲間の緊急連絡により、某区二丁目の薄汚れた路地裏に駆けつけていた。

彼が目にしたものはボロ雑巾姿の仲間二人。

若葉色に髪を染めているチームの情報網と、ピンク髪にしている後輩。


揃いも揃って、汚らしい路地裏で倒れていた。


「アキラさん! ホシ!」


共にいたケンは仲間の哀れな姿に驚愕、差していたビニール傘を放り出し、急いで仲間の一人を抱き起こす。


ヤマトもアキラを抱き起こし、


「どうした何があった!」


いつもの余裕を掻き消して仲間にしっかりしろと声を掛けた。

呻き声を上げ、じわじわと目を開けるアキラはヤマトの姿に苦笑。


情けない姿を見せてしまったと詫びを口にした。


「アキラっ、何が……」

「さあ……分からん……辻斬りにあった気分じゃい。いっきなり知らん……輩に真っ向勝負……売られて……人数で……敵わんかった」


「真っ向勝負……だと。真っ向勝負なんざ、俺の知る限り……」


真っ向勝負好きな連中はあのチームしかいない。


ではまさか、この仕業は。


「くそっ」


ヤマトは眉根をギュッと寄せ、盛大に舌を鳴らす。

向こうも協定を結んだと聞く。

幾分頭を使うようになった、優勢になるために仲間を。


昔からそうだ、真っ向勝負好きとは言うが自分達の優位を保つため、また優位に立つため、小さな芽は絶やす。奴等の仕業しかない。


「チッ、奴等め。やりやがったな。アキラ、立てそうか」

「わしは……何とか。それより、ホシが……やばい」


よろよろと自力で上体を起こして姿勢を保つアキラはホシを病院に、呟いてヤマトに凭れ掛かる。


「貴様も十分ヤバイじゃねーか」


今すぐ病院に連れて行くから、ヤマトはアキラを背に乗せてケンに声を掛ける。


同じようにホシを負ぶっているケンが、そっとヤマトに視線を送る。


思わず目を細めた。ヤマトはこれまでになく憤っている。


「……ヤマトさん」

「こいつ等を病院に連れて行ったら、すぐに集会だ。そろそろ決着をつける頃合みてぇだしな。ゲームに本腰を入れる時期がやって来た。荒川め、やってくれやがって」


クッとシニカルに笑みを浮かべるものの、ヤマトの眼はちっとも笑っていなかった。



「荒川達を潰す……気に食わない奴等を潰す。それが俺達の最大最終目的。決着をつけるぞ。俺の仲間を弄くってくれた礼をたっぷりと返してやる」




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