「なあケイ……ハジメは戻って来るよな」


本当に仲間は戻って来るだろうか……小さくて淡い不安を口にしたヨウは顔を顰めた。


「当たり前だろ」


俺はコンマ単位で即答してやった。


「戻って来るよ。あいつは此処が好きなんだから。
一時離脱するだけって言っていただろ? ハジメは持ち前の頭脳で親なんて障害はひょいっと飛び越えて戻って来る。
付き合いの長いお前が信じてやらないでどうするんだよ。待とう、ハジメの帰りを」



「……ケイはいなくなるなよ。頼むからテメェまでいなくなるなよ」



不意打ち食らう俺はキョトン顔でヨウを見つめた。けれど向こうは真剣だ。表情が険しい。



「大事なメンバーがいなくなって俺はこのザマだ。舎兄が支えにしている舎弟までいなくなったら、俺はマジでどうすりゃいいか分かんねぇんだ。

テメェは俺に言ったな。最後までついて行くって。
じゃあ、守れよ。最後の最後まで俺について来いよ。俺に言った言葉、ぜってぇ守れよ。男に二言はねぇからな」



いつもの勝気口調に戻るヨウは、


「テメェのことを信じているからな」


俺を見据えて最後までついて来ることを約束するよう言ってきた。


うっわぁ、めちゃくちゃプレッシャー掛けてくるな、俺の舎兄さまも。


だけど彼の言う通り。

ついて行くって言ったのは誰でもない俺だ。

口先だけなんて格好悪い。


「ああ。約束だ」


俺は目尻を下げてヨウに右の手で拳を作ると、それを舎兄に向ける。 


「怪我をしたって、這ってでもお前について行くさ。俺はいなくならないよ。ヨウも、勝手にリタイアするなよ。
ついて行く相手がいなくなったら、俺も、チームも、路頭に迷うじゃん。

それと自己犠牲思考は捨てろよ? 皆で頑張るんだ。何のためのチームだよ」


「言ってくれるじゃねえか、ケイ。俺がリタイアするわけないだろ。俺もいなくなんねぇ。それに……テメェの言う自己犠牲思考は捨てることにする。
あくまでチームだよな、俺等は。チームで終わらせるぞ、この対立」


コツンと俺の拳に自分の拳を当ててくるヨウは約束だと泣きっ面ながらも綻んで見せた。


あーあ、泣きっ面にイケメンじゃあ、その容姿も台無しだな。


ほんと友達にしか見せられない酷い顔だぞ、イケメン不良くん。

いや、お前にとってイケメンなんてオマケ的存在なんだろうな。



ヨウ。

最初こそお前を恐がっていた俺だけど、今ならお前を堂々友達だと言えるよ。

お前は学校一恐れられている着飾った不良。

日陰男子の俺とは対照的なドハデ日向男子。


だけど、俺と同じ高校生。

中身は俺と同い年。


俺と同じように不安や弱さ、そういった心を持つ……俺の大事な友達。


お前は俺の大事な友達だよ。胸を張って言える。



「ヨウ、終わらせよう。この対立、因縁、諍い。全部、ぜんぶ……終わらせような」

「ああ、終わらせるぞ。これ以上、ハジメみてぇな犠牲者を出さないためにも、すべてを終わらせる」



荒川庸一は俺、田山圭太にとって、大事なだいじな友達だ。