なあ……ココロ。



ココロに恋をしている俺の姿は君にはどう映っているんだ? 情けなく映ってないか?



俺はさ、俺に恋をしてくれているココロがすっごく可愛く見えるんだ。一々ココロにときめいていたりするんだ。


今まで片意地を張ってずっと気にしない振りばかりしてきた。


ココロはヨウが好きだから、割り切って諦めようとしていたけれど、君を意識をしたら最後だった。


結局俺はココロだけを見て、ココロだけを追って、ココロに振り回されてばっかりだったんだ。


ココロが地味っ子だとか、苛められっ子だったとか、そんなのカンケーなくココロが可愛く見える。


断言できるよ。

どんな女の子が来ても、今の俺の目にはココロしか映らないってさ。


それだけ君に夢中だよ。

きっと人はこの状況を『恋は盲目』と呼ぶんだろうな。



俺達はどちらが先に伸ばしたか分からない手を結び合い、二つの体温を一つにしながら歩道橋の階段を下りた。


そろそろ帰らないと、ヨウ達が帰りを待っている頃だろう。


歩調は相変わらずいつもの三倍遅いけどさ。


また会話がなくなっちまったけど、今はこれで十分だった。


視線を流せば彼女とかち合って、お互い照れ笑い。


何一つ言葉はなかったけど手を結んで足並みを揃える、それはとてもとても幸せなやり取り。少なくとも俺達にはそう、感じている。感じているよ。


彼女と結んだ手のぬくもりを感じながら、俺はちょっとだけ欠けたお月さんと顔を合わせる。


(日賀野達と衝突しても、この手を守れるだけの力くらいは欲しい。そう思っても罰は当たらないよな?)


形も大きさも異なる手と手は、ちょっぴり肌寒い夜風に吹かれても解かれることはなかった。 



⇒№05