彼女の息を呑む声が聞こえるけど、駄目だ、それ以上言わないでくれ。俺の心臓が持たない。


こんな行動を取るなんて自分でも予想だにしていなかったけど、俺がやると似合わないかもしれないけど、そんな問題じゃない。


告白してまだ時間が経ってないだろとか、そういう問題じゃないんだ。


本当に心臓が持たない。破裂しそう。

どうにかなりそうだからちょっとだけ……ちょっとだけ、さ。


「ケイさん?」


腕の中で名前を呼んでくる細い声に、

「ちょっとだけ」

俺は彼女に甘えて肩口に額を乗せた。

そしたら彼女は「はい」返事をして嬉しそうに笑ってくる。


ついでに、


「お返事の代わりと思っていいですか?」


おどけ口調で質問を飛ばしてくるもんだから本気の本気でタンマ。

少しくらいさ、俺に感情処理の時間を与えてくれたっていいじゃないか。

早鐘みたいに鳴り響く心臓を抑える術を知らない俺は、そのままの状態で口を開いた。


情けないことに体が震えている。

緊張かもしれないし、別の震えかもしれない。今の俺にはよくその震えの正体が分からなかった。


「今しばらくは忙しい日々が続くと思う。

安易に隣に置いておくこともできなければ、デートもできない。チームのことで忙しいと思う。

なにより俺はヨウの舎弟、あいつを支えるために留守にすることが多い。
常にココロの傍にいてやることができない。

それでも俺と付き合ってくれるか? 精一杯ココロのことを守るよう努力するから」


沢山の勇気を振り絞ってココロに伝える、偽りない俺の気持ち。

守るなんて簡単に口にしちゃいけないと思う。



なるようになる……じゃ、駄目だ。



それだけの実力を持っていない俺だからこそ、簡単に口にしちゃいけないと思う。


逆を言えば口にしたら、それだけの覚悟と努力をしないといけない。


だから俺は俺なりに覚悟と努力をするつもりだった。  

なあココロ、すべてを承知の上で俺に言ってきてくれるんだろ? 強くなると言ってきてくれるんだろ?



ありがとう、ココロ。



君の覚悟を受け止めて、俺も不安を吹っ切って覚悟することにするよ。

大切な人を作り、その人を守る覚悟……なんてクサイけど、ココロを守れるくらいも強くなる決意を持つことにするよ。

それくらいしないと、男すら名乗れねぇ。


「俺もココロに特別になって欲しい。そして特別になりたい」


顔を上げて、彼女を見つめる。


多分、今の俺は最悪なほど顔が赤いんだと思う。

緊張もしているし、声だって情けないことに告白タイムよりも震えている。


だけど、そんなちっぽけなことはどうでもいいや。


ココロの気持ちさえ聞ければ、本当にどうでもいいって感じ。

今度は俺の気持ちを素直に受け止めてくれたようだ。彼女は破顔する。


「はい。喜んで」


恋は不思議だ。

彼女の一つひとつの言動に可愛いや愛しいとそう思う俺がいるんだから。