浅倉さん達と合同打ち上げは残念なことにできなかったけれど、俺達なりに馬鹿騒ぎをして気分を盛り上げたいもの。


学校が終わるとメンバー全員で、それこそ普段は俺等舎兄弟を敵視しているタコ沢も呼んで(ほらメンバーだしな?)、カラオケへ。



本当は協力してくれた利二も誘いたかったんだけど、曰く今日から六勤だから無理とのこと。

バイトが詰まっているらしい。


若干、不良と関わりたくないですオーラが醸し出されていたような気がしないでもなかったけど……敢えて気付かない振りをしよう。


ということでカラオケにやって来た俺等なんですが、いやぁ人数が人数なだけに個々人で歌う時間が勿体無い。


だから二人ずつ、歌いたい面子が歌うことになったの、だけど。


「んじゃあ、俺、これで。ワタル、俺とお前の十八番きたぜ」


「ヨウちゃーん、さっすがぁ! それはお父様お母様世代ならば、必ず知ってるアニソン! リメイクもされてるアニメ、ワタルフラーッシュ!
その次はハジメちゃーん、ヨウちゃーんとタッグで十八番のあれいきなよ~ん! ムーン……なんたらメークアップ! で変身するアニメの主題歌!」


「ヨウキシード仮面さま! 僕と是非一曲!」


「うるわしき乙女のために歌ってあげるのもまた慰めの一つ。薔薇を添えて歌ってあげよう、セーラーハジメ」



………お前等、それはなんのコメディ?



ヨウ、ワタルさん、ハジメ。

某アニメの主題歌たちが十八番なのかよ。


カラオケでいつも何を歌っているんだ? 寧ろ、普通の歌ったことあるか?


てかヨウ、お前、カラオケに来た途端、イケメンくんが残念イケメンくんになりつつあるぞ。

ノリ良すぎっつーか、お前こそ、カッコイイクールな歌を歌わないといけないんじゃね? 女子のガッカリ度パねぇって。



「モトモトモト! 俺っち達の時代がやって来た! 行くぜっ、朝娘!」

「おっしゃあああ! オレ達の十八番、皆にお披露目だキヨタ! 目指せ、アイドル全曲制覇! この後はAKM!」



………アイドルグループに固執する、お前等って。



まさかファン? ……ちげぇだろ、お前等、ウケを狙いたんだろ? カラオケってウケを狙うための場所じゃねえぞ。


向こうではハジメとタコ沢が演歌の欄を熱心に見ているし。


お前等はおいくつ?

俺と同い年じゃないだろう。


皆の歌チョイスに唖然の呆然の遠目。


個性豊かに色んな歌を歌っている皆のノリが良過ぎる。

調子ノリもびっくりなノリだ。ついていけねぇ。


タンバリンで音頭を取ってやりながら、俺は今日カラオケで歌うのは止そうかと考えていた。


金の無駄にはなるけど、断然傍観していた方がおもろいぞ。この光景。


皆の歌のチョイスがこれまたおもろいのなんのって、皆、ウケ路線でカラオケを満喫してるもんだから普通の歌が来ない。


ちっとも来ない。いや、いいんだけどさ。


今度は弥生と響子さんが歌うみたいだ。


わぁい、女の子が歌うんだ。

普通に可愛い曲を期待してっ……ぬぁああ?! めっちゃデスメタきたっ。うっるせぇ!



暗くなる個室、ジャンジャンドンドンガンガン鳴り響く音楽に俺は思わず耳を塞ぎたくなった。



ヨウ達は予想をしていたのか、手を叩いて爆笑しているという。


もはやハメを外しすぎである。

そろそろ普通の歌が聴きたくなってきたのだけれど、俺がここで雰囲気を切るようにJ-POPを歌ったら水を差すようなものだ。



「ケイさんは歌わないんですか?」



遠目で響子さんと弥生の勇姿を眺めていた俺に、ちょっと大き目な声で声を掛けられる。


右隣に視線を流すとココロがタンバリンを片手に微笑んでいた。

俺と同じように盛り上げ役を買って出ているようだ。


さっきまで響子さん達の傍にいたというのに、移動をしてきたのだろうか?