クツリと喉を鳴らすように笑う健太は、まるで吹っ切ったように一笑。
シニカルに笑うその顔は、俺のトラウマ不良を思い出させる。
誰かと一緒にいれば感化されるもんだよな。
俺だってヨウに感化される面が多々あるし。ったくお前、嫌な奴に感化されちまってさ。ほんっとぶっ飛ばすぞ、その面。
「退け!」
「ヤだね」
ジミニャーノ攻防戦が繰り広げられている中、裏道を走っていた不良達は俺等の喧嘩光景に立ち止まる。
そりゃ驚くだろうな。
裏道でこんな喧嘩を目撃しちまったら。
向こうはすぐに、片方が日賀野チームメートだって気付いたんだろう。
迷うことなく副頭さんに歩んで、彼と同じ髪の色をしている不良が「日賀野チームだな?」確認してくる。
肯定の返事をする副頭さん、
「榊原チームなんだけど」
そいつは協定を結んでいるチームだと身分を明かしていた。
ああくそっ、やばいって、マジでやばいって!
どうにか止めに入りたい俺は必死に健太を退かそうとするんだけど、こういう時、冷静が人の勝敗を左右する。
焦る俺に対し、余裕綽々で健太は押さえ込んでくる。
くっそっ、性格悪くなっただろ? お前!
俺等の攻防戦が激化していく中、
「アンタに恨みはないけど」
そいつは副頭さんに前触れもなく拳を振り下ろす。
え? 思わず瞠目してしまう。
体重を乗せていた健太もこれには驚いたようで、紙一重に避ける副頭さんの安否を確認するために顔を上げた。
「なんの真似だ?」
副頭さんのご尤もな問いに、そいつは口角をつり上げ、「リーダーからの伝言だ」目を細めて嘲笑を零す。
「榊原チームは今を持って日賀野チームと協定を解消する」
彼の発言に仲間であろう数人が非難の声を上げたけれど、彼を守るように三人の不良が飛び出し、仲間内に攻撃を仕掛けた。
仲間の攻撃によって次々に倒れる榊原チーム、その側らで同チームのひとりが強硬手段を使って副頭さんに協定の解消を求めていた。
解消できないのならば、日賀野大和が一番頭に血が上る方法で協定を解消する。そう脅す赤髪不良が構えを取る。
「おいテメェ等。荒川チームを助けてやれ」
今、やられそうになっているのは浅倉チームの協定だと彼が声音を張った。
あいつは俺達のことを知っているようだ。
そいつの命令によって仲間内を伸した不良達が俺とハジメを助けるために駆けて来る。
危険を察したのだろう、副頭さんが健太とホシを呼びつけて自分の下に戻るよう指示した。
面白くなさそうに鼻を鳴らし、
「帰る。ヤマトに報告しなければ」
副頭さんが肩を竦めた。
「ヤマトに事を報告する。『エリア戦争』に間接的係わりがなくなった今、傍観する価値はなくなった、と。榊原との協定は白紙となった」
「えー? でもヨウ達が係わっているよ?」
ホシのご尤もな意見に、
「機会は幾らでもある」
此処で呼んで決着付けても向こうは疲労しているだろう。疲労した輩を甚振る、そんなの面白くない。
淡々と意見する副頭さんは、
「それに分も悪い」
向こうを睨んで肩を竦めた。



