嫌で大切な事に気付いちまった俺は、ガリガリ頭部を掻いてムシャクシャする気持ちを霧散させようと躍起になる。


どうするよ、ココロに「予約な」とか言っちまった後にこんな大切な事に気付くなんて。


此処で気持ちを告げずに終わるのは男としてどうかと思うけど、この問題に目を逸らすわけにもいかないし。



あ゛ー!


母音に濁点付けるもんじゃないけど、ッア゛ーな気分! どーしよう! 盲点だったよ、この問題!


……ええいっ、気持ちを告げる舞台を作っちまったんだ。自分の手で、ちょい成り行きだったけど、自分の手で作っちまったんだ!


気持ちは伝える。おう、伝えてやらぁ。田山圭太は男になってやらぁ!


でもココロを彼女にするかどうかは(上手くいけばの話だけど)、この問題を彼女自身に話してからにしよう。うん、そうしよう。


「にしても、ありえねぇ。こういう大事な事は、もっと早く気付くべきだろ、俺。いやでも、俺、今まで地位の高いところまできたことなかったしさぁ」


平凡人生万歳でしたから。

まさかこんな地位的なことで悩もうとは! 田山圭太も昇進したものだ、うん。


昇進に対して幸せかどうかって聞かれたら、そら悩むけどな!


頭を抱えてうんぬん呻いている俺に対し、ハジメはチョイチョイと肩を叩いて声を掛けてくる。


「ケイさんケイさん。僕を置いて、何処に旅立っているの? ネバーランド?」

「そうだよ。今、妄想ウェンディと戯れていたところ」


「なるほど。妄想ティンカーベルとも一緒に戯れてるんだろうね。そりゃ邪魔してごめん。だけど戻っといで。僕等、お仕事中」


そりゃそうだ。

俺は思考を現実に戻して、大きく溜息。これは後で一杯一杯悩もう。此処で悩んでも、喧嘩の妨げになるだけだしな。 

あ、メールが来ているみたいだ。

妄想ネバーランドに行っていたせいで気付かなかった。


ランプがチカチカ点滅しているし。


俺は未開封になっているメールを開いて、中身に目を通す。次の瞬間驚愕。


差出人は利二からだったんだけど、




『From:五木利二 件名:緊急
 “エリア戦争”を知った日賀野メンバー数人がそっちに行った。見かけてしまった。今、そっちに向かっている!』




内容が内容なだけに俺はドッと冷汗。

おいおいおいマジかよ。

俺等のことを聞きつけちまったのか?

それとも、『エリア戦争』を興味本位で野次馬しに来ているのか?!


どっちにしたって俺にとっちゃ芳しくない一報だぞ!


俺は急いでハジメにメール内容を見せる。


血相を変えたハジメは真偽を確かめるために弥生に連絡。俺はヨウに連絡を入れるためにアドレス帳を開いた。




「……そこにいるのは荒川チーム? か?」




ギク。

真偽を確かめる暇も、舎兄に連絡を入れる暇も、神様はお与えにならなかったようだ。


恐る恐る声の方に首を回せば、燃えるように赤い髪を持った不良(確か名前はススムだった筈。


向こうのチームの副頭だってことは憶えている!)と、ピンク髪の中坊不良(モトと仲が悪かった不良で名前はホシ)、それから……ああ、お早い再会だな。健太。