「決着つけようなぁ? 榊原。よくもまぁ仲間を次々に引っこ抜きやがって……舐めンな!」

「お前のアタマの悪さにはウンザリなんだよ! ただただチンタラお仲間ごっこ、ンなの俺は望んでねぇなかったっつーの!」 



自分が欲しかったのは居場所、それも当然あるが周辺の地域を治めるだけの力。

チームの力なのだ。

つまり地位と名誉が欲しかったらしい。榊原という男は。


折角、力の集った仲間がいるというのに、何も使わない、行動しない、群れるだけ。そんなの堪えられなかった。

皆の力を無駄にしている無鉄砲のリーダーに堪えられなかったと苦言。


なるほど、確かに一理あるだろう。

リーダーとしての自覚がなかったことも、アタマを使わなかったことも、無鉄砲だった自分がいたことも認める。反省点だと思っている。


しかし、だからと言って仲間達を引っこ抜き、チームを分散させたことには目を瞑れない。


どのような手を使って仲間を手に入れたか、自分に引き込んだか、使える仲間だけ勧誘をしたか知る由もないが、使えない仲間を見捨てた榊原は間違っていると浅倉は断言。


腕っ節のない仲間はクズだから見捨てたのか?


だったら、榊原も自分と同じでリーダー失格だ。


「腕っ節のねぇ奴等は奴等で、チームの支えになっている。どっか糧になっているんだよ。力だけで信用なんざ買えると思うな、阿呆が。

そりゃ偏食っつーんだ。

どいつもこいつも腕っ節があるから、それだけで仲間に引き込んだとしてもなぁ。偏食してるおめぇのチームは崩壊するのがオチだ!」


「ンだと?」


「おりゃあ、この目で見たぜ。どんな奴でも仲間だと受け入れて、チームの糧になろうとしている仲間の力を最大限に引き出そうとしている男を。そういう男こそ、リーダーに相応しいんだぜ。榊原」


男と女、地味と不良、日陰と日向、強弱のある人種。

そんなものお構いなしに仲間だと受け入れ、仲間のために走り、仲間の持つ力を最大限に引き出し、仲間を守ろうとしている男の姿をこの両目でしかと見たのだ。



近くで見てきたのだ。


そういうリーダーになりたいものだと心から思ったほど、そいつの背中は大きく逞しく頼り甲斐があった。



「おめぇじゃ無理だ」



力がすべてだと考えているお前じゃ、形だけのリーダーにしかなれない。

浅倉は左の拳で相手の左頬を殴り、次いで右の拳で鳩尾を狙い撃ち。


よろめき、後退する榊原にニッと余裕の笑みを見せてやる。


「勝ってやるよ。弱小と呼ばれたチームのリーダーとして、おめぇにぜってぇ勝ってやる」


力だけがすべてじゃないことを、今此処で証明してやると浅倉は目を細めて笑った。








「……はあっ?! 今っ、ヤマトチームと一緒ってどういうことだ!」


『いやぁ、ちょ……向こうから姿を現してくれた、みたいな? しかもそっちも、不良が来ているんだろ? ………さすがに俺等、大ピンチです。ヨウ』


さてヨウは裏道を使い、ヤマト達を呼びに榊原の刺客が向かっていることを舎弟に一報していたのだが、思わぬ報告に素っ頓狂な声音を上げる他なかった。


まさかケイ達がヤマト達と一緒にいる、なんて。


なんだ、この大どんでん返し大ピンチは!


表情を強張らせながらも、


「待ってろ! 今そっちに行く」


ヨウは居ても立っても駆け出した。

エリア戦争が気がかりではあったが数分ほど抜けても、今の状況では支障など出ないだろう。


それよりもヤマト達をどうにかしないと、この喧嘩が負けてしまう! 浅倉達に一旗あげさせることが不可になってしまうではないか!


焦るヨウの前に、


「乗って下さい!」


心情を察したモトがチャリで現れた。

何度か相手の攻撃を受けたのだろう。

学ランが砂埃まみれ。顔や体は傷だらけだ。


それでも負けずチャリを乗り回し、喧嘩に参戦していたのだろう。

砂で汚れた頬を学ランの袖口で拭い、再度乗るよう捲くし立てる。


「ケイのようにはいきませんけど、オレも足くらいにはなれます! 急いで!」

「助かるモト! 頼む、裏道まで走ってくれ!」


ママチャリの後ろに乗り、向かうは商店街から大通りに繋がる裏道、平坦一本道だ。




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