舎弟と策士の助言を素直に聞き、「気を付けろよ」身を案じて電話を切る。
早速一報を仲間内に連絡、チャリ組は脇道を使うよう指示した。
了解だとばかりに元気よく返事したのはチャリ組切り込み一隊員のモト。
先陣を切る少数チームに自ら志願したのだ。
切り込み組はなるべく喧嘩が弱い者、体力に相当自慢がある者でなければ、いざ榊原チーム達と衝突した時に支障が出る。
榊原チームとやり合う本隊は腕っ節のある者達が集っとかなければ、当初の目的を果たせないのだから。
「にしてもタコ沢。テメェ……ママチャリがやけに似合うな」
首を捻りヨウはタコ沢に視線を投げる。
同じく切り込み組のタコ沢元気(※本名:谷沢元気)は、見事にママチャリが様になっていた。
チャリのボディの色が臙脂色だから、またなんともかんとも……ことごとく赤系が似合う男である。
下手すればバイクよりも似合う図だとヨウが指摘すると、
「るっせぇ!」
俺は谷沢だとお馴染みの台詞を吐いて、こめかみに太い青筋を立てる。
「いいか、これが終わったら俺は貴様等に雪辱を晴らすからな! 舎兄弟に必ず決闘を申し込んでやる!」
「んー? 俺、テメェに雪辱を晴らされないといけねぇことなんざしたっけ? パシリくん」
すっ呆けるヨウにタコ沢は更なる青筋をこめかみに浮かび上がらせる。
「だぁあああああ! 貴様という奴はっ……チッ、ヤマト達との決着がついたらでいい。決闘を申し込むぞゴラァアア! それまでは大人しくパシリ……じゃない、臨時戦闘員を買ってやるぜゴラァア!」
「安心しろって。臨時じゃなくて、正戦闘員だから。テメェも俺等の立派な仲間だよ」
イケメン不良、荒川庸一(現在15歳)はサラッと前髪を手で掻き分けながら爽やかに決めてみる。
周囲&バックにキラキラとした光があるような、ないような、いやはやイケメンとは羨ましい限りである。
何を言っても絵になるのだから。
それに「カックイイ!」と弟分のモトがはしゃぎ、タコ沢は仲間と呼ばれてジーンと感動に浸って、「滅べクソイケメン!」いるわけなかった。
タコ沢は主張する。
思い返せば、この舎兄弟に出逢ってから碌な事がない、と。
ほら目を閉じれば、こやつの舎弟にチャリで踏まれるわ。弁当を頭の上に落とすわ。白飯とタコウインナーを頭にのせてくるわ。
それ見たキャツ達は揃いも揃って爆笑してくるわ……舎兄は忌まわしきあだ名(タコ沢)を付けてくるわ。
最悪なことにパシリくん扱いにされるは、本当に碌な事がなかった!
だがしかし仲間と呼ばれて、少しばかり心に思うことがあったり……である。
「フン。誰が胸糞悪いテメェが率いるチームの仲間になんて……いや俺様の力が必要なのは分かるが……」
ブツブツ文句垂れるタコ沢に、
「ツンデレにならないのんのん」
にやりにやりワタルがのほほん茶化したため、
「ツンもデレもあって堪るカァアアアア!」
気色の悪い表現するなと熱血漢タコ沢元気は大音声で吠えた。今日もすこぶる元気の良い奴である。



