「お、おお俺だって弥生が好きとか、一言も言ってないんだけど!
弥生にはハジメいるしさ! 傍から見たかんじ、二人って相思相愛だし、俺の入るところないし! 異性として好きだと思ったこともないし!」
なのに、どうしてそんな誤解するんだよ。
ちょいココロを責めたけど、彼女はまだ異議ありとばかりにぜぇっと一呼吸置いて物申す。
「だってケイさん、弥生ちゃんと凄く仲が良いから! とても羨ましいと思うくらいにっ」
「それだったらココロだって、ヨウを見る時の目はすげぇ優しそうだったよ! すっごく嫉妬するんだからな」
ぜぇぜぇっ、二呼吸ぐらい置いて俺等は取り敢えず視線を逸らして感情整理。
弥生のことを好きだと思われていたなんて、俺の日頃の行いって一体……そりゃあいつとはよく話す関係だけど。
勢い余って嫉妬するとか言っちゃったけど、ココロが悪いんだぞ。
俺はココロのことが好きなのに、弥生のことが好きだって誤解しているから。
ココロは俺と弥生の仲を羨ましいって言うし。
言うし。いうし。いう……し?
じんわりと顔に熱が集まってきた。
ちょっと待て。今のココロの発言はどういう意味なんだ?
え、それはそういう意味に捉えていいのか?
俺だってそこまで鈍くない。
まさかココロの好きな相手って。あいてって、まさか。
いや落ち着け。とにかく落ち着け。最優先に落ち着こうか。深呼吸、はい深呼吸……ちょ、何が何だか分からないぞ。
平常心を保とうとしているけれど俺、心中で大パニックを起こしているぞ。
ぎこちなく相手を盗み見ると、向こうも顔を赤くして嘘だとばかりに俺を一瞥。
視線がかち合えば、向こうは俯いてしまった――ココロが俺の気持ちに察している。
同じように俺もココロの気持ちを察しちまった。
馬鹿みたいに心臓が高鳴る、体温がグングン上昇していく、口内がカラカラに急速に渇いていく。
(ココロは俺のことを。ヨウじゃなくて、俺のことを?)
これは夢か幻か、それともドッキリか。
違う。
これは現実だ。
まぎれもない現実なんだ。
彼女は俺をそういう対象で見ていたんだ。
もしここでうやむやにしてしまえば、ココロは自分の気持ちを隠してしまうだろう。
時間が経てば経つほど隠してしまうことだろう。
そんなの嫌だった。
俺は彼女の口から気持ちを聞きたかった。これは夢じゃないのだと信じたかった。
だから俺は今この瞬間に伝えないといけない。自分の気持ちを。
緊張のあまりに頭が真っ白になりそうだ。
だけど、まずは、まずは否定をしないと。
彼女の誤解を訂正しないといけないと、前にも後ろにも進めない。



