でも、今回ばっかしはそうもいかない。
渋々泣く泣くオロオロとしながら戦闘してきますよ。しちゃいますよ。
できる限りのことはしますよ……泣きたい。
勝算、五分五分なら尚更、泣きたい放り出したい逃げたい!
俺に腕っ節があれば話が別だけど、非力田山には勝率五分でもきつい。
はは、俺もいい加減に観念という二文字と覚えた方がいいみたいだなぁ。
すんなり観念して、広い心で喧嘩を受け入れる。
そんな聖人になれたらいいなぁ。
おりゃあ、普通の人間だ。無理なものは無理!
聖人田山にも、Z戦士田山にも、スーパーサイア人田山にもなれそうにないんだぜ!
かめはめ波なんて会得できたら、不良を倒すどころか地球を救えちゃうんだぜ!
「な? ハジメ。俺達、Z戦士にはなれないよな? 気円斬とかどーやって会得するよ!」
「……ケイって時々話がぶっ飛ぶよね。一体全体何の話?」
おっとしまった!
また俺としたことが……田山ワールドを作り上げていたようだ。
しかも俺の中だけで作り上げてるもんだから、相手には通じない。
アウチ! そんな不審な目で俺を見ないでくれ、ハジメ!
軽く咳払いした俺は、トントンッとボールを床について、もう一度ハジメにパスをする。
いい音を出してキャッチする相手がナイスパス、と声掛けをしてきた。
返事をする代わりに話を続ける。
「ハジメの頭脳がフルに使われる喧嘩になりそうだな。力の配分といい。喧嘩するタイミングといい。どうしていくかは、ハジメに掛かってると言っても過言じゃないや」
「随分とプレッシャーを掛けてくれるよなぁ、ケイって。僕の力なんて高が知れてるよ」
自分を卑下するハジメの笑みは自嘲帯びている。
「馬鹿。ハジメはそれだけ実力があるってことじゃんか。俺よりか遙かに喧嘩歴は長いだろ? ……まだチームを抜けようと考えていたりするのか?」
彼の笑みが深くなる。他人事のように「さあね」
間髪を容れずに否定をして欲しかったのだけど、ハジメにとってはやっぱり自分の非力がネックになっているみたいだ。
それに関しては俺だって同じなのに……根っこから自信を喪失しているから、ハジメは馬鹿なことを思い続けるんだと思う。
気持ちが分からなくも無い。
片隅で思案をめぐらせながら、俺はハジメに明るくおどけ口調で言う。
「いいじゃん、力がなくたって。世の中インテリ不良ってのもモテると思うぞ? 今回の喧嘩で弥生にズバッとカッコイイところを見せられるチャンスじゃんか!」
「ンなッ!」
動揺したハジメはボールの軌道を誤り、壁へとボールをぶつけてしまう。
なんでそこで弥生が出て来るんだと飛びっきり動揺してくれるハジメに、「べつにー」性悪な俺はボールを拾いながらにやり。
いやさ、ヨウに同じような事でからかわれたなら、俺も誰かにしてやりたいじゃん?
だからターゲットをハジメに絞った。