そう静かに語る浅倉さんは姿勢を正して、腹を決めているのだと俺等チームを見据える。彼の眼には強い意思の宿っていた。

俺は浅倉さんを恍惚に見つめる。凄いな、この人。

リーダーの素質が無いなんて嘘だろ。



だってこんなにも覚悟が決まっているんだから。



チームのためにプライドも何かも捨てて、俺等に嘲笑われるかもしれないのに身内話をして、俺等と協定を結ぼうと交渉を持ち掛けている。

この人ならどんなことでもしそうだ。


文字どおり、どんなことでもだ。


それとも、チーム分裂がこの人を変えたんだろうか? とにもかくにも、この人の意思は強そうだ。



「浅倉、話は分かった。
けど、さっきも言ったがすぐに返事はできねぇ。俺の独断で決められるような問題じゃねえからな。浅倉、テメェの気持ちは分かるが、俺もこのチームのリーダーだ」 



腰を上げたヨウは浅倉さんの前に立って、彼を見下ろす。

浅倉さんとヨウはタメ。

つまり俺ともタメなわけだけど、なんだか浅倉さんの方が年上に見える。


だって悟ったような顔を作っているから。


険しい顔から一変、ヨウは微苦笑を零した。



「身内をエリア戦争に関わらすのは、少しばかり気が引けている。俺の率直な気持ちだ。こいつ等は俺にとって大事なメンバーだからな。それは分かってくれ」



すると浅倉さん。

同じ微苦笑を零してヨウを見上げた後、ゆっくりと立ち上がった。 


「アンタは、好いリーダーだな。おれと違ってさ」


そう、屈託なく言う浅倉さんはヨウに砕けた笑みを向けた。

悟った顔から一変、俺等と同じ年齢相応の顔で笑っていた。


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