自分達は榊原(さかきばら)と元々チームメートだった。

しかし、先日誰がチームのリーダーに相応しいか争い、ついに分裂。



まるで今の俺達のように対立していると言う。



だけど決定的にこっちと違うのは、榊原が巧みな手でチームの大半をメンバーから抜き取ってしまったことだ。

しかも有能で使える奴等ばかり。


浅倉チームに残っているのは、あまり喧嘩のできない、どちらかといえば力に劣りのある弱小不良達ばかり。


それだけでも苦しいのに、榊原は“あるチーム”と手を組んで圧倒的優勢を見せた。


そう、日賀野チーム。 

奴等は日賀野チームと協定を結んで圧倒的力を見せ付けてきやがったそうだ。


このままじゃ対立するどころか、一方的にチームが潰される。


榊原は浅倉さんを含む弱小不良達を甚振りたい魂胆で、こちらが身を引いて終わる問題ではない。


身を引いても甚振られるであろう地獄。

向かっていても甚振られるであろう地獄。


浅倉さん自身は喧嘩ができる身の上らしいけど、他のメンバーはそうでもない。

逃げるくらいなら立ち向かわなければ。そう思ったらしい。


だからエリア戦争にも加担した。

どうせヤラれるなら精一杯足掻いて向こうにダメージを与えたい。


とはいえこちらにだってプライドはある。


最初から負けの喧嘩など毛頭もする気は起きない。

どうにか榊原と対抗する策は……考えに考えた挙句、浅倉さんは日賀野チームと対等に渡り合えるチームと手を組むことを決意した。


そう、荒川チームだ。


日賀野達と対等に渡り合えるのは、元々奴等と一つのグループだった荒川率いる不良チームしかいないと浅倉さんは考えたそうな。


こっちに頭を下げる気持ちで来たと浅倉さんは断言。プライドをかなぐり捨てても、チームを守りたい気持ちがあるから。


「おりゃあ、馬鹿だから喧嘩しかできねぇ。こ
れでもリーダーなんだがぁ、すぐに熱くなって周りが見えなくなる性格だから。


こんなリーダーに嫌気が差して、大半の奴等は冷静沈着な榊原について行った。

深慮ある奴の方がリーダーとして素質があると思ったんだろうな。


それでもこっちに残ってくれた馬鹿もいる。
榊原の誘いを断った奴もいるし、チーム分裂後も手前のチームの奴等は全員残ってくれている。抜けることもできるのに、おれに付いて来やがる。


おりゃあ、感動したよ。


正直、大半の奴等が榊原について行っちまって途方に暮れた。おれ的に皆でワイワイできりゃそれで良かったんだが、メンバーはそう思ってなかったらしくて榊原についていった。


けど少しならずおれを慕って、弱小となったチームに居残って、付いて来てくれる。


何もしないわけにいかないじゃないか、なぁ?

そいつ等を全員守るためにも、荒川、お前に交渉を持ちかけて協定を結びたい。ある程度の難題条件は覚悟した上でな」