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あれだけ高熱が出ていたのに、俺の熱が引き始めたのはヨウとシズが見舞いに来てくれた翌日のこと。

きっと俺の体内にいる細胞たちが不良に怖じて、驚異的回復力を発揮したんだと思う。


あの時は本当にビビッた。


まず買い物に行った筈の浩介からヨウ達が見舞いに来てくれている旨を伝えてびっくり。


次いで「携帯に連絡を入れているらしいよ」と口達されて二度びっくり。


嫌な予感を抱きながら携帯を開くと、新着メールと着信の件数の多さに三度びっくり。


仲間内の殆どから連絡が来ていたのだから、そりゃ驚くにも程がある。


体調が悪かったとはいえ、一報を寄こさなかったのは俺が悪い。


仲間内からどれほど心配をかけていたのかを思い知らされてしまい、反省も反省、猛省したよ。 


そういえば、利二からも体を気遣うメールが来ていた。


あいつには何も言っていないのに無理するなよ、という文面。

首を傾げつつも、純粋に心配してきてくれていることは分かったから素直に気持ちを受け取った。


こうした出来事があったものだから、体もド根性を見せてくれる。

ヨウ達が見舞いに来てくれたその日の夜には七度後半まで下がり、翌日には七度前半。翌々日には微熱程度になっていた。



どーなっているんだ、俺の体。あんなに熱帯びていた体が一気に冷えたのか?

そんなに不良訪問にビビッたのか?

……本音を言わせてもらえば、めっちゃビビッたけどね。肝冷えたけどね。心臓が口から出そうになったけどね!



閑話休題。



体温は平温に戻ったけれど、今週は学校に行かなかった。


月曜日から水曜日は追試で休みだったし、俺の熱が完全に下がったのは二日後。無理して学校に行くより、体を万全にしておきたかった。


親にも止められたのだから休む口実には困らなかったよ。

あれだけ高熱が出た後だったしな。


とにもかくにも気持ちにも整理を付けたかった。


これ以上、俺の私情でヨウを含む皆に気を遣わせるわけにはいかないじゃないか。


まだ、皆と顔を合わせていないけれど、舎弟の話を聞く限り、余計な気を回してしまったことは容易に理解する。


知ってしまったからこそ、今度こそ健太のことでヘコむのはよそうと思う。


俺は自分に言い聞かせることにした。


ヘコむのはやめだやめ。

チームに迷惑が掛かる。健太と過ごした楽しかった日々の記憶には錠を掛けることにした。それが一番の策だって分かっていたから。


そうだろ、健太。

お前もきっと同じように錠を掛けちまったんだろ。なあ?