「ヨウ。俺はな、改めてお前の舎弟に選ばれたあの日から、心に決めているんだ。お前を信じるって。俺はお前を信じて、最後までついていくよ」



信じる。

それは簡単で重たい言の葉だ。



誰より辛いのは舎弟なのに……舎弟はいつの日も、自分に告げてくれた。最後までついていくと断言してくれていた。



しかし自分は一件でどういう態度を取った?

自分は舎弟を理解していなかった。本当の意味で彼に信用を置いてなかったのは自分だったのだ。


何が舎兄だ。

心の底から舎弟を信用してない舎兄が、どこにいるのだ。



「治して、また顔出すから、今日は……来てくれてサンキュ。嬉しかった」



帰り際、ケイは礼を言ってきた。

見送りに来られない分、自室のベッドから自分に向かって礼を言葉に表してくれた。


「ああ、そうだ。ヨウ、あの時、言えなかったけど……俺の弱音を聞いてくれてサンキュ」


その礼を素直に受け取れずにいたヨウは、たむろ場に向かいながらひたすら考えていた。舎弟のことを。

喧嘩はできずとも自分の足になると明言した舎弟。


自分の力になると言ってくれた舎弟に、自分は何ができる? 何をしてやれる? まず舎兄とはなんだろう?


舎弟は舎兄の支えだろう。


ケイがそういう役割をしているのだから。では舎兄は?



(あ、響子とキヨタとココロの伝言。伝え忘れちまった。ココロの伝言を聞けば、あいつ、少しは元気になったんじゃね? シクッたな)



ヨウは舌打ちを鳴らす。


ケイには体だけじゃなくて心も元気になってもらいたいものだが……自分も舎弟を支えられるような存在でありたいな、とヨウは切に思う。


舎弟に背中を預けている自分だが、自分もまた舎弟の背中を受け持ちたい。


そこでヨウは気付いた。


今、一方的に自分が舎弟に背中を預けている側なのだ。


逆に自分が舎弟の背中を預けられた時など……あっただろうか? と。



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