本日の結果報告。

追試組のために催した勉強会は見事に撃沈、失敗に終わった。


集中できるわけがないんだよ、対峙しているチームが傍らにいるのに勉強なんて。


ただでさえ勉強ダメダメ組なのに。

両者の追試組もようやくそのことに気付いたらしく、場所を移動しようと意見を出した。


よくもまあ三時間以上も、喧嘩もしないでいられたと思う。それは大いに褒めてやりたい。



だけど喧嘩より勉強を取るべきだろう。



喧嘩はその時で終わるけど、留年は自分の人生に関わってくるのだから。さすがに勉強不足による留年は痛いよな。

どんなに落ち零れても現役で卒業したい不良達は、喧嘩したい気持ちをグッと堪え、場所を変えるために筆記用具等を片付けていた。


殺伐とした空気を取り巻きながら両チームは外に出る。その時の店員さん達のホッとした顔と言ったら(どんだけ迷惑がられていたやら!)。



「必ず潰す」



去り際、日賀野がヨウに挑発の言葉をぶつけてくる。


負けん気の強いヨウは鼻で笑い、


「潰し返す」


ついでに追試落ちちまえなんて子供じみた悪態を付いていた。


二人の喧嘩を見ていると本当に子供だと思う。

見た目は着飾っているくせに、口論の内容のくだらなさと言ったら、もう!


互いにストレスを抱え、別々の道を歩き始める。


日賀野達はこれから何処で勉強するのか分からないけれど、ヨウ達は一旦たむろ場に向かって羽を伸ばすんだと。


そこでちょこっと復習してから家で勉強する予定を立てたらしい。

幸いなことに倉庫には電気がきている。


よって日が暮れても灯りに困ることはない。


不法侵入しているようなものだから、あんまり電気を使うと業者さんに訴えられそうだから控えてはいるけどさ。

暇人の俺も当然、仲間達とたむろ場に向かおうと考えていた。

けれどその考えは携帯のバイブ音により一掃される。

新着メールを開き、中身を読んだ俺は目を細めた。

静かに携帯を閉じると、近くにモトに声を掛けて野暮用ができたことを伝えた。


先に帰る旨を伝えて欲しいと頼むと、モトが怪訝な顔をして俺に尋ねてくる。



「……何か、遭ったのか?」



曖昧に笑う俺の表情にモトは何を思ったのだろう?

「なあケイ」

物言いたげな顔をして、話を切り出してくる。

けれど時間が惜しかった俺は、「頼むぜ。またな」と手を挙げて愛チャリを押した。

「待てよ!」

モトの呼びかけに振り返らず、ただただ皆とは別の道を駆ける。


「――ケイ?」


ヨウが顧みてきた瞬間を、俺は目にすることができなかった。