それでいいのだと俺は思った。

恋心を抱くよりも、チームの仲間として話す方がずっと楽しい。


気兼ねなく語れるほうが目を逸らして気まずくなるより、ずっとずっと楽しいじゃんか。


「お待たせ致しました」


店員さんから注文した商品がのったトレイを受け取って、俺達は階段を目指す。

二つに分けてもらったトレイの上には各々ハンバーガーやらポテトのLやらナゲットやらサラダやら飲み物やらで混雑している。

特にシズの注文した商品の数には目をひん剥くもんだ。


「シズさん、よく食べますよね。この量は凄いです」

「だなぁ。さっきハンバーガーを四つ食ったくせに、また三つ注文するだなんて。どういう胃袋をしているんだろ」


消化の早さもさながら、金の消費も半端ねぇよな。

あいつの小遣いの大半は食費で削られているに違いない。


「体つきは俺達と変わらないんだけどな」


少し俺よりでかいくらいで、体つきには大差がないのに胃袋が異常だろ。四つあるんじゃね? 牛みたいにさ。


「甘い物も大好きですよね」


ココロは微笑ましそうに目尻を下げた。


「私、何度か弥生ちゃんや響子さん、モトさん、そしてシズさんとデザート食べ放題に行ったことがあるんですけど、それはそれは凄かったです。シズさん。見ていたらちょっと胸焼けが……」

「うん……想像もしたくないよ。多分ワンホールは食べているんだろうし」


想像するだけでも胸焼けしてきた。

ゲンナリする俺にココロは微笑を零して今度、一緒に食べ放題に行こうと誘ってくる。


俺としては別にいいけど(だって既にシズから“食べ放題にいける人”って認識されてるし)、でも男がデザート食べ放題かぁ。絵にならないよな。


「絶対に胸焼けする自信があるよ」


俺は快諾の代わりにそう返事した。


「私もなんです」


でも皆で行くと楽しいですから、とココロは綻んでくる。

女子はそりゃ楽しいだろうけど、俺、男……まあいいか。


ココロもいるんだし……とか……馬鹿なことを思うんじゃなくて……何事も経験だ経験! 若い内ならハメだって外せる! 行ってやろうぜ、デザートバイキング!


心中で自分自身の気持ちを否定しながら、階段を上っていると出入り口が騒がしくなった。


なんだろ。

団体様で訪れたのか? やけに話し声の数が多いような。


声からして学生のような気が……って、ゲッ、あれは!


俺達は思わず足を止めた。

店に入って来たのは最悪なことに、日賀野率いる俺達と対立している不良グループだった。


日賀野はご機嫌ナナメなのか不機嫌そうな顔を作っている。


帆奈美さんや魚住……それに見たことのない不良が数人ポツポツといる。


みんな頭がカラフルだな、黒がひとりもいねぇじゃんかよ。とか、そんなこと能天気に思ってる場合じゃない。


おいマジかよ、なんであんた等が此処にいるんだよ。ご縁あり過ぎだろ!


「け……ケイさん」


ココロは震える声で俺にどうしましょうと質問を投げてくる。

どうしましょうも何も奴等が一階フロアで席取りしてくれることを願うことしか。


「ヤマト、二階にいこー? 喫煙組もいるし」


ピンク髪の中学生らしき男子生徒が日賀野に余計な意見をした。

あのピンク髪不良はホシと呼ばれているらしい。

奇抜な髪の色をしているわりには似合っている。


お洒落だし、顔立ちがハーフっぽい。

日賀野はホシの申し出をぶっきら棒に返した。