長々と男子便で駄弁ったヨウはケイと共に皆のところへ戻った。


そろそろ勉強を再開している頃合だと思ったのだが、仲間達はまだまったりと休憩時間を過ごしていた。


それどころかケイの姿を見るや否やワタルは会話を止め、


「コーラを買ってきてん!」


財布を彼に投げ渡す始末。

ケイはそれをキャッチし、何で俺が……と引き攣り笑い。


「ケイちゃーん、僕ちゃーんナゲットも欲しいや」

「ワタルさん……それってパシリをして来いと」

「たまには貴様、パシられて来い。ゴラァ! 俺様はいつもパシられているんだぜ!」


「なんでそこでタコ沢が反応……しかも自慢になってねぇ。あ、何でもありません。買って来ます。えーっと皆は?」


ついでだとばかりにケイは他に注文はないかと仲間に質問を投げ掛けた。

半数以上が飲み物(またはハンバーガー追加)を頼んだため、ケイはまたもや引き攣り笑い。


確かに、大勢からのパシられるのは大変だろう。

まだ勉強する気持ちになれなかったヨウは一緒に行こうかと自己申告しようとしたが、向こうでそわそわとしている人物を見つけ、身を引くことにした。



「ケイさーん! 俺っちもッ、ぐぇつ!」



行って来ると告げるケイの後をすぐさまキヨタが追おうとしたため、ヨウは襟首を掴んでそれを止める。

「何するんっスか! さっきは我慢したから今回はいいでしょう!」


酷いと文句垂れるキヨタを無視し、ヨウはそわそわとしていた人物に目を向けた。

相手は意を決したのか、ケイの後を追い駆け、声を掛けているところだった。


「ケイさん、私も行きます。ひとりじゃ大変でしょう?」


ココロに声を掛けられ、ケイは些か驚いた様子。


しかしすぐに苦笑いを作った。


「いいよ。重くなると思うし、座っときなよ」

「半分ずつ持っていけば大丈夫です。一緒に行きましょう……それとも迷惑ですか?」


しゅんと萎んでいく彼女の様子に何か思うことがあったらしい。


「分かった」


じゃあ一緒に行こうとケイが笑顔を作った。

見る見るココロの表情が花開く。

嬉しそうに顔を見合わせる彼女に対し、ケイも照れ臭そうに笑い合っていた。


あんなに気まずい雰囲気だったくせに、その空気は何処へやら。


ヨウは溜息をつきながら、テーブルに頬杖ついた。

どう見ても両想いだというのに、なんであんな勘違いをしてしまうのか。


二人を見ているだけで青春くさいドラマをみている感がムンムン。


こちらが見ていてやきもきするほどいい感じだというのに、歯痒いったらありゃしない。


響子がドカッとケイの席に座ってきた。腕を組んで長い長い溜息を零す。


「さっきココロと個別に話してきたんだが……なんでか知らないがクソ面倒な勘違い起こしてやがる。ココロの奴」


「そっちもか。こっちも面倒なことになってるぜ。『他の奴を見ているから』だってよ」

「ケイもかよ。ココロもそれなんだ。ワタル、アンタちょっかい出したんじゃないだろうな?」


二人が誤解してしまうなんて、これは誰かがちょっかいを出したに違いない。


可能性のある人物にガンを飛ばし、響子は軽く手の指の関節を鳴らした。


「濡れ衣だぴょん!」


おどけ顔だが若干血の気を引かせているワタルは全力で否定した。


彼だって人並みの心は持っているのだ。


一応、場は弁えている。



一方、ヨウは真実を知っているため、取り敢えず知っている限りのことを響子に話すことにした。

舎兄弟だけの秘密にしておくとは言ったが、やはりこれはココロの姉分に語っておくべきだろう。



「ああああぁああんのっ、ウザ男、チックショウめがぁあああああ!」



響子の怒声が二階フロア店内に響き渡ったのは、ケイとココロが一階フロアに向かった直後のことだった。






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