困ったなぁ。


俺達、あの事件以来、ぎこちない関係が続いているんだ。

一日、二日経っても、本調子を取り戻せず、俺達は自然と避けあっている関係に落ち着いている。

一応、ヨウ達の前では普通に振舞っているんだけど(みんなに気を遣わせちまうし)、それでもなかなか元通りの空気が作れない。

魚住から、あんな風にからかわれたんだ。相手にどう接していいのかも分からんのよ、俺は!


どうする……席を替えてもらうか。

いや、変に動けば周囲から怪訝な眼を向けられるかもしれないし……でも背に腹はかえられない!


「キヨタ。場所を」

「や、弥生ちゃん。場所を」


替わってと言えなかった。

だって彼女も席替えしたさそうな雰囲気だったんだもの!

これで俺と彼女が席替えしても、左隣に移動するだけだからプラマイゼロ。意味ナーシ!


じゃあココロが弥生とチェンジしてもらうのを待てばいいのかな、と判断して相手の出方を窺ってみる。


すると相手もまた俺の出方を窺っているようだ。

きょろっと探りを含んだ眼を向けてくる。


ぐぎぎっ、下手に動けないぞこれ。


「なにしてんだよ。さっさと座れってケイ」

「ココロも座れって。あんた等、目立ってっから」


俺はヨウに、ココロは響子さんに腕を引かれて無理やり着席させられる。

そこで鈍感な俺は気付いた。

かえって目立つ行動を取ってしまっていたことに。


今のはまんま彼女を意識している態度だったぞ。


頭を抱えたくなった。


ココロをチラ見すると、周囲を見渡しておろおろしている。


嗚呼、彼女も自分の失態に気付いたようだ。もうダメだ。帰りたい。

ここで弄られたら耐えられるだろうか? いや絶対に無理だ。死にたい。


「食べようよ。早く勉強しないと」


助け舟を出してくれたのは弥生だった。

俺とココロの気まずい空気を散らすように、ハンバーガーのラップを剥いてそれにかぶりつく。つられるように皆も食事を開始。思い思いに談笑を始めた。


良かった。

安堵の息を零し、俺もバーガーのラップを向いた。


ダブルチーズバーガーだ。美味そう!


現実逃避するように、もしゃもしゃとハンバーガーを咀嚼する。うん、美味いうまい。溶けかけのチーズがこれまた美味い。


「おっ、ココロはバーガー頼んでねぇんだな。アップルパイか? それ。美味そうだな」


俺の右隣に座っていたヨウがココロに話題を振った。


「はい」彼女が微笑を浮かべて綻ぶと、「後で頼んでみっかなぁ」ヨウがてりやきを咀嚼しつつ、アップルパイを眺める。


「一口食べてみます?」


ココロの申し出により、

「マジ? んじゃあケイ、一口貰うか?」

話題を何故か俺に振られた。口内の物を噴き出しそうになる。