その後の俺達は始終、無口だった。


和気藹々と会話していた時間がうそのよう。


互いに素っ気無い態度を貫き、まるで事件をなかったかのように振る舞った。俺達は子供だった。


ああいうちょっかいに慣れていない。

だから変に意識をしてしまい、必要以上に距離を置きたがった。


置かないと自分の中でも感情が処理できなかったんだ。



「お、戻ってきたな」



たむろ場に戻ると、のらりくらり勉強をしていたヨウ達が迎え入れてくれた。

その面持ちはどこか意味深で、魚住の出来事を思い出させてくれる。


そうだ、ヨウ達も送り出す時にからかいの眼を……出発の際のやり取りを思い出した俺達の態度は、もはや落ち込みレベルである。


買って来たルーズリーフや菓子類を適当な場所に置くと、俺とココロはダンマリのまま各々窓辺に放置していた通学鞄を手に取る。気持ちは完全に上の空だ。


「お、おい。ケイ、ココロ。どうしたんだよ。勉強しようぜ。ヨウ達に教えてもらわねぇと、うちとハジメだけじゃ辛いんだ。な?」


身支度をする俺達に響子さんが動揺を見せる。が、俺やココロも一杯いっぱいだ。

「すみません用事を思い出したので」

ココロが先に返事し、

「俺も急用ができましたんで」

今日のところはおいとますると俺は肩を竦める。

ヨウ達に魚住達と出くわした報告もせず(べつに何もなかったから報告する必要はないと思っている)、ただただ帰る旨を伝えた。


彼女と視線がかち合う。

素知らぬ顔で互いにそっぽ向いて、「あ、おい!」響子さんの呼びとめも無視し、そそくさとたむろ場から退散した。

表向きは冷然としている俺だけど、内心は落ち込んでいた。


だからこそたむろ場にいない方がいい。余計な気を遣わせそうだから。


ココロとは入り口で別れ、俺はチャリを取りに行くために倉庫裏へ。


人目のない場所まで足を運んだ俺は、ようやく積まれている木材に腰掛けて大いに落ち込むことができた。



(さ、最悪だ。ココロとそういう関係に見られたとかっ、見られたとか!)



頭を抱えて身悶える俺の心は雨天模様だ。


変に意識せずとも、冗談で受け流せば良いことなのに、どうしても俺にはできなかった。

芽生え始めた感情に自覚しつつあるからこそ、そういうからかいが受け流しきれない……ココロは一件をどう思ったのだろう?

絶望にも似た気持ちを抱きつつ、膝に肘をついて頬杖をつく。


暫くの間はココロと視線を合わせることも無理そうだ。









「ケイ……なんか遭ったな。むっちゃ落ち込んでやがる。響子、ココロの方はどうだ?」



「出入り口のところで、『意識しすぎたかな。ケイさんに浅ましい女だと思われちゃったらどうしよう』だってよ……落ち込んでやがる。何が遭ったんだよ。
ああくそっ、はじめてのお使い作戦が失敗するなんて。あれで親密度を上げる作戦がっ! リーダーどうすりゃいい! リーダー!」



「まじか。これ、リーダーの出番か?」

「そうだ、これはチームの問題だぜ!」



「……リーダーの俺大変だなおい」 



倉庫内のとある、会話。



⇒#06